多事想論articles

気付きを促すゲーム

 コンサルタントはお客様から、「設計では相当奇抜なアイデアも出せるのに、交渉や調整の場ではつい杓子定規に対処してしまい、後から後悔することがあります。やはり経営書に学び、発想法も特別な訓練が必要でしょうか?」というご質問をいただきます。
そこで今回は「気付きの力」について考えます。

 発想法は、頭の使い方を日常とは切り替え、課題解決のための潜在案を導く「水路」として働きます。経営事例など知識を深めて上流の水位を引き上げれば、気付きという水は一層流れやすくなます。そのため、これらの組合せは王道のやり方と言えるでしょう。
 ただ、この地道な打ち手も万能とは言えません。他人が決めた枠組みの中で考え判断することに抵抗感を覚える人も多いでしょうし、現代の社会人には時間の余裕がなく、気合だけでは知識習得を続けることは困難です。さらに知識の総量が増えるほど、理想と現実のギャップに気付き、獲得した知識も陳腐化したように思え、意欲が下がることもあります。

 こうした状況で、「自分に合ったツールを選び、学習速度も高めよう」と王道に徹しても本質的な解決策は得られません。
 時には、確立された手法や知識から一歩離れ、日常生活の中で、気付きの力を楽しみながら育む試みをとることもよいでしょう。
 日常の中で気付きを促すゲームのひとつをご紹介します。

(1)「アンテナにかかった言葉」をメモする
新聞・ネット・TV・ラジオ・中吊り広告・会話など、ひっかかりを覚えた言葉を、業務内外、無差別にメモします。手帳が扱いにくい時は、携帯にテキスト保存することも一案です。(携帯操作時にはマナーへの配慮が必要です)

ある日のメモからの抜粋
「展示会で超薄型TVが注目」「コンビニ24時間営業見直し」「ワンセグ内蔵電子辞書が欲しい(同僚談)」

(2)最新のメモを漫然と眺める
毎日か隔日、数分間ランダムに眺めます。意識して奇抜な案(「超薄型電子辞書をコンビニで発売」など)をひねり出すことはせず、客観的に楽しむ気持ちで、書いては眺め、を続けます。

(3)メモの言葉に共通する特徴からキーワードを出す
次第に、メモの中に普遍的な特徴や流れが見つかる機会が増えます。無意識での問題認識や世間のトレンドを映したものかもしれません。特徴をキーワードとして抽出します。

キーワードの例
多機能化(コンビニ、ワンセグ)」「省スペース(超薄型TV、コンビニ、ワンセグ)」「無目的な行動の奨励(コンビニ、ワンセグ)」

(4)キーワードを束ね、問題点を仮設定する
次に、多少分析的にモノを見ます。キーワードをセットで捉え、共通の問題点や背景の構造的な問題の有無を推論も交えながら考察します。

共通の問題点
多機能化省スペース無目的な行動の奨励は、顧客ニーズを超え過剰になりやすく、高価格化・使い勝手の悪さ・省エネへの逆行などの弊害をもたらす」

背景に対する推論
「本来お客様のためであるべき価値が、自社優位性の競争に使われるためか」

(5)課題を設定し、対処策を考える
問題点が出たので課題を設定します。個人で対処可能か、組織的な取り組みが必要か、協力を仰ぐ人は誰かなどをシミュレーションします。通常、他人に見せるものではないので、自由闊達、思う存分に立場の離れた方のご協力も視野に入れてみます。

課題設定例
「コンビニ深夜営業は、せめて地域内の持ち回り制にしてはどうか」

号令かけまでは簡単ですが、消費者・企業・行政の一体化は誰が仕切るか?など考えどころが多いでしょう。

 このゲームは、自分で集めた素材と、使い慣れた思考で進められることがポイントです。このように、日常の中で、日常を離れた課題を自ら作り深く考えることによって、「専門外の場でも気付き力を発揮する素地」を築くことができるでしょう。

執筆:新井 ゆかり
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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