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設計者の気配り

みなさんは「設計者の気配り」と聞くとどんなことを想像するでしょうか?
今回は製品開発を効率よく進めるために必要となる、設計者同士の気配りについてお話したいと思います。

私たちのお客様である自動車やカメラ、複写機などを開発している製造業では、少なくとも十数人、多い場合には数百人の規模で開発体制を組まれています。
さらに近年では、協業やアウトソーシング、グローバル開発、外注エンジニアの活用など文化や利害関係の異なる人々をも巻き込んだ開発が必要になってきています。
これらの開発体制は、
・製品最終購入者からの要求の増大・複雑化
・メカ、エレキ、ソフト分野の統合的な開発の必要性
・製品ライフサイクルの短縮(=開発期間の短縮)
などの背景から必要になってきたものです。

このように製品の構造や機能が複雑になり、開発の体制が変化していく中で、市場の要求を把握し、タイムリーに製品をリリースしていくためには製品開発の設計者としてどんなことが必要になってくるのでしょうか?
この答えの1つとして、私は気配りを持った情報共有を挙げたいと思います。

製品開発に携わる関係者が多くなると、効率的な開発のために業務区分を定義します。
多くの場合、業務区分は担当する部品単位などで区切られ、構成部品が多岐にわたる場合には全体を統括する部門などが存在することもあります。
ここで注意しなければいけないのは、製品に求められている各々の要件はそれぞれ単一の部品や制御機能だけで実現しているわけではないということです。
近年の工業製品において、1つの要件に対しメカ・エレキ・ソフト分野にまたがる複数の部品や制御機能が複雑に関係しあっているということは特殊な事例ではないと思います
このような複雑な製品構成であるにも関わらず、設計者が自身の業務区分に固執し、「私の担当部品はこの範囲なので、あとのことは他の部品に任せておこう」とか、「機能要求は満足していないが、あとはソフト担当で何とかしてくれるだろう」というような考えを持っていたら、その製品開発はどうなってしまうでしょうか?
製品開発の難易度や複雑さにもよりますが、開発途中での不具合や開発期間の遅延などが発生してしまうことは容易に想像が出来るでしょう。

iTiDでは開発の見える化手法を用いて複雑に絡み合う技術の成り立ちを整理し、要件と部品や制御機能の関連性や部品同士の関連性などを可視化していますが、この可視化に必要な情報はお客様(=設計者)自身に検討していただく必要があります。
その技術の可視化を行う際に、設計者が達成しようとしている要件と関連の深い部品や制御機能をどこまで考慮出来るか?、すなわち他の設計者の担当範囲に対していかに気配りが出来るか?が可視化による効果を左右してしまうことがあります。
達成すべき要件と機構や制御機能の影響が把握できている設計者は、自分が影響を受ける部品・制御機能だけでなく、自分が影響を与えてしまう部品・制御機能も考慮した技術の可視化を行い、1つの機能を複数の部品や制御機能で満たすようなアイデアを抽出・実現することが出来ますが、周りからの影響や周りへの影響を考慮せず、自分の担当範囲のみにフォーカスしてしまう設計者が技術の可視化を実施しても大きな効果をもたらすことは出来ないのです。

日本では「あうんの呼吸」と呼ばれる気配りをうまく使い、すりあわせを必要とするものづくりを得意としてきましたが、複雑な製品構成・大規模な開発体制が必要になってきた近年では「あうんの呼吸」が通用しにくくなってきたのかもしれません。
このような環境下でもより良い製品をタイムリーにリリースするためには、従来の「あうんの呼吸」だけではなく、設計者同士がお互いの影響を可視化した気配りを行い、積極的に担当範囲のグレーゾーンを補完しあう「可視化を伴ったあうんの呼吸」を行うことが重要です。
自宅の軒先を掃除するときにお隣の軒先を掃除するような少しの気配り、そんな気配りが製品開発の潤滑剤となるのではないかとお客様のご支援をさせていただきながら私は強く感じています。

執筆:榎本 将則
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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