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認識の違いを防ぐために

製造業の取り組みとして有名なPLMという言葉が生まれて久しく経ちますが、「PLMとは何か」を自らの意見を持って説明出来る人は多くないと思います。 書籍やシステムベンダーのカタログに載っている定義の中では「製品ライフサイクル全般を管理する概念」と広い意味で謳ってみたり、 「データを一元管理するための手法」や「製品ライフサイクルに関わる統合システム」と少し範囲を絞って謳ってみたりと様々です。

PLMは企業が市場環境に適応していくための様々な取り組み(例えば、環境・リサイクル・製品の投入/撤退の意思決定)を行っていく中で謳われてきた概念ではありますが、 対象とする範囲が非常に広く、それを支援するコンサルティングファームやシステムベンダー毎の得意とする領域で語るため、主に狭義の定義が乱立しているのが現状のように見受けられます。

PLMのように広く認知されている言葉であっても、複数の解釈が存在します。もちろん、これはPLMに限ったことではありません。
複数の解釈が存在するということは、その言葉を使って会話をする以上、話し手・聞き手毎に様々な解釈をする可能性があることを意味しています。
従って、複数の解釈が存在することを把握せずに理解した気になってしまうことは、コミュニケーション上、非常に危険な行為と言えます。

開発現場では様々な部門、お客様、協力会社といった異なる文化や利害関係をもったメンバーと電話やメール、会議など、様々な場面でコミニュケーションを取り、合意形成を行います。 お互いその場では合意したつもりでいたけれども、実は違う理解をしていた。 後から聞くと「そういう意味だったの?」「そんな認識はしていなかった。」ということも良くあるのではないでしょうか。 特に「少し聞いた事のある言葉」ほど、この落とし穴にはまってしまいます。

では、このような事態を防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか?

まず基本的な心得として、その言葉にはどんな意味が含まれているのかを理解することが挙げられます。 ただ言葉を調べるだけではなく、もう一歩踏み込んで「その意味はどんな背景があって生まれたのか」まで掘り下げると理解が深まります。 言葉を深く理解していると、相手がどの意味で使っているか、どの意味で受け取っているかを確認しやすくなります。

また、相手が言葉をどの意味で使っているか、ということを確認する上で大事なポイントがあります。 それは相手を知ることです。どのような能力を持っていて、今はどんな状況下に置かれているのか。 相手の「背景」を把握することにより真意を掴みやすくなります。

これらは円滑なコミュニケーションを図るために、情報を発信する側も受信する側も必要な心得です。

この心得を踏まえた上で、
・相手の発言に対して自分の認識を伝えて確認し合う
・ホワイトボードや紙に記載して内容を確認し合う
・議事録を残して確認し合う
といった行動を取ることで、認識の違いはかなり解消されます。

製品開発はモノや情報の連鎖によって成り立っています。
認識の違いによってこの連鎖が中断しないように心掛けていきたいですね。

執筆:星野 雄一
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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