多事想論articles

「意識改革」の火付け役

「行政改革は制度や組織を変えることじゃない。そこに生きる人間たちの意識を変えることなのです」

これは「県庁の星」という映画の一節で、改革には「意識を変えること」がいかに重要であるかを主人公が訴える際に放った言葉です。

「意識を変えること」の重要性は、製造業の業務改革にも当てはまります。事実、多くの経営者の方が「うちの社員には『意識改革』が必要だ」と言われます。いくらルールや仕組みを作っても、人間の意識が変わらなければ形骸化してしまうということを、経営者の方は肌で感じているのでしょう。みなさんにも心当たりがあるのではないでしょうか。

それでは、経営者が言う「意識改革」とは何を意味するのでしょう。経営者は社員に対し、具体的な「行動」につながる「意識改革」を求めているはずです。つまり、「自ら問題に気付き、その問題解決に向けて主体的に行動すること」と言い換えることができます。

ここで、映画「県庁の星」で描かれている「意識改革」を簡単にご紹介します。

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織田裕二演じるエリート県庁職員は、民間の業務ノウハウを学ぶために地元のスーパーマーケットに出向します。ところが、そのスーパーは業務ノウハウを持っているどころか、行政指導を受けるような三流スーパーでした。融通の利かない典型的な役人気質だった県庁職員は、ここで得られるものは何も無いものと諦めていました。

一方、そのスーパーで最も長く働いている柴咲コウ演じるパート従業員は、以前から店の抱える問題を感じていながら、どうせ変えられないものと諦めていました。

そんな折、パート従業員は県庁職員から店の問題点を的確に指摘され、彼なら改革できるかもしれないと考え、業務改革の指導を依頼します。融通が利かなかった県庁職員もパート従業員の熱意に押され、三流スーパーを変えることができるかもしれないと思い始めます。そこから業務改革がスタートします。

二人はまずスーパーの店長を説得し、スーパー全体の業務改革として承認を得て、それを実行に移しました。

実際に行った改革は、倉庫の中の物置禁止区域をビニルテープで明示するなど、当たり前とも思える簡単なものでした。それでも、改革に懐疑的だった社員でさえ、物置禁止区域でタバコを吸う自分に気付き、喫煙可能な場所に移動してタバコを吸うようになるのです。

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この「意識改革」を実現する上で、最も重要な役割を果たしているのがパート従業員です。 最初はただ漠然と店の抱える問題を感じていただけでしたが、県庁職員の指摘を受けて問題点を正しく認識し、主体的に行動して問題を解決しました。 正に「意識改革」を自ら実現したのです。

ただ、この「意識改革」がパート従業員だけに留まっていたら、この物語はサクセスストーリーとは言えなかったでしょう。 パート従業員は自らの意識だけでなく、県庁職員を巻き込み、店長を説得し、スーパー全体の業務改革として社員全員の意識を変えることに成功しました。正に「意識改革」の火付け役となったわけです。 こうして社員全員の「意識改革」を実現したからこそ、業務改革が成功したと言えるのでしょう。

「意識改革」の火付け役になるためには、このパート従業員のように必ずしも役職は必要ありません。火付け役に求められるのは、何よりも改革しようとする熱意と行動力です。その熱意が自らの行動によって周囲に伝われば、次第に「意識改革」の輪が広がっていき、遂には社内の業務改革を成功に導くことができるでしょう。

みなさんも「意識改革」の必要性を感じたら、その熱意を自ら行動に移し、改革の火付け役になってみてはいかがでしょうか。

執筆:竹森 恵一
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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