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定量値をもとにしたデザインレビュー改善のススメ

 あなたは自社のデザインレビューに問題や不満を抱えていませんか?

デザインレビューについて多く耳にするのは2つです。

(1)次フェーズへの移行可否を判断しているが、最後が定性的。(声が大きい人の意見で決まる。経験などで決めてしまう。など)
(2)次フェーズへの移行可否を判断できず、条件付き承認で問題を先送り。(決めるべきことが決められない)

その結果、以下のような現象に陥りがちです。

◆開発終盤になって仕様変更が多発し、その度に徹夜を何度も繰り返し、何とか製品リリースしている。
◆目標原価を達成できないまま、製品リリースしてしまう。
◆開発途中で今の技術力では作れないことが分かり、開発を延期・中止する。

このような開発が続くと、現場は頑張っても疲弊感がどうしても生じてしまいます。
どう変えていけば良いでしょうか。

 ある部品メーカーはデザインレビューを実施していたものの、問題先送りばかりを行っていました。仕事を受ける際は自社の技術で作れるかの判断がなく、顧客と自社の上層部同士で受注が決定することも頻繁にありました。上層部同士で決定したプロジェクトでは「とにかくやってくれ」の一言で、現場はできないことを承知で徹夜を繰り返し、納期遅れや最悪の場合は開発中止に至っていたという結末です。そのため、現場がデザインレビューの結果に納得しておらず、その声がマネジメント層にも届いていませんでした。
現場は疲弊し、閉塞感を訴えていました。

 そこで、企画段階のデザインレビューに対し、製品魅力、市場性、自社技術レベルなどを極力見えるようにする改善を行いました。

・市場予測の調査項目を明確化し、定量データで裏付けを行う。
・重要な機能と特性値を抜け漏れなく抽出し、他社とベンチマークする。
・自社の技術の強み/弱み、今の自社技術の限界を明確化する。

また、運用面での問題もあったため、デザインレビューの有効性を高めるため、実施・承認方法を以下のように変更しました。

・技術部長承認を、事業部長承認に変更。
・デザインレビューの審議項目に優先順位を設定。
・有識者がデザインレビューに参加し、意見を求める進め方に変更。
・条件付き承認の廃止。

変更後はじめての企画デザインレビューでのことです。現場から「今の会社の技術力では、納期どおりには開発できない」と報告した際、事業部長からは「しかし、すでに受注が決まっている。なんとかやって欲しい」と要望が出されました。ここまでは従来のデザインレビューと変わりありません。

しかしその後、各担当者から以下のような説明があったのです。

▼設計担当
「必達すべき特性のX±3%を実現するには新しい設備を設計し導入することが必要です。設備納期の期間がありますから、リソースを多く投入しても納期に間にあう可能性は殆どありません」

▼品証担当
「新しい技術導入のため全数検査が必要で、目標を2倍以上オーバーした組立時間となります」

▼製造担当
「新しい加工が必要となり、組立設備の新規導入が必要です。今から設計し発注すると約11ヶ月掛かります」

▼調達担当
「先程の設備は、導入費用含め総額XXXXX万円です。その結果単価XXX円となる予定で、利益が見込めません」

▼プロジェクトマネージャ
「仕様、目標品質の実現は可能ですが、事業目標の利益に貢献できません。しかし、X±5%であれば新しい設備導入が不要で、約6ヶ月で開発可能です」

 このように設計に関しては設計者が、お金に関しては調達担当者が、品質に関しては品質保証担当者が、それぞれの責務を果たし、判断に必要な材料を抜け漏れなく明確に伝えたのです。結果、そのプロジェクトは開発中止となりました。

 本来であればデザインレビューの非承認という結果は、事業として良い結果ではありません。しかしながら、事業部長からそのデザインレビューの最後に「判断できる材料が過不足無く挙げられていた。お陰で適切な判断ができた。ありがとう。」という発言がありました。現場の声がマネジメント層に届いた瞬間です。一旦開発中止となったもののデザインレビューで問題点がきちんと指摘されたため、その後X±5%の特性値を営業部門や顧客に納得してもらい、製品化に成功しました。

 これらの活動を続け、企画段階で精緻な審議ができるようになり、そのお客様の製品化率(製品化した件数/企画件数)は約20%も向上、その後の設計修正件数も約40%削減できました。
デザインレビューにおける判断の『正解』は誰にも分かりません。人の判断は、定量的なデータがあると客観的に判断しやすくなり、納得しやすくなります。もし実施できていないのであれば、3ヶ月から半年もあれば非常に効率のよい開発に変えられます。この機会にデザインレビューのやり方を見直されてはいかがでしょうか?

執筆:福嶋 徹晃
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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