多事想論articles

先入観を排除するための3つの工夫

 人間は歳を重ねたり、特定分野の専門家として仕事を続ける過程で、様々な先入観を持つようになります。先入観を持っていると、 思わぬところで人を傷つけたり、気づかぬうちに滅多に訪れないチャンスを逃してしまったりします。ビジネスで言えば、いつの間にかお客様や同僚の 信頼を失ってしまったり、新しいサービスや製品の、アイデアの芽を潰してしまうことさえあります。

 本稿では、私自身が日頃から先入観を排除するために心がけていることのうち、「他者との関係」に関するものを3つ、ご紹介しようと思います。


1. 異なる世代と交流できる場を持つ

 各世代にとって当たり前なことは、意外に多くあるものです。 例えば新入社員の頃にバブルを経験した世代は、当時と比較して昨今の不景気を考えるでしょうし、最近10年の間に入社した世代にとっては、不景気は「ずっとそこにあるもの」でしょう。 パソコン、コンビニ、ソーシャルメディア、スマートフォン...製品やサービスの面でも、物心ついたときから「ずっとそこにあるもの」だった世代、つまりネイティブ(※)が存在します。

 (※ nativeを和訳すると「その国の言語を第一言語とする人」となりますが、近年はnativeという言葉の使われ方が広がってきました。 例えば「生まれた時からパソコンやインターネットに慣れ親しんできた人や世代」を「digital native」と呼びます。)

 ネイティブの持つ感覚は、それ以外の世代にとって想像し難いものです。 そのことが先入観や思い込みを生んだ経験は、どなたでもお持ちではないでしょうか。

 そこで職場や家族以外で、自分と異なるネイティブとの交流の場を持つことをお勧めします。 なぜ職場や家族以外かというと、慣れ親しんだ場での役割から自分を解放するためです。 年上でも年下でも構いませんが、できれば10年、20年以上離れた世代と交流すると良いでしょう。 具体的な場としては、趣味の習い事やサークル活動、地域の定期イベント、ボランティア活動などが挙げられます。最近ではFacebookなどのソーシャルメディアを通じた交流でも、意義があるのかも知れません。

 もしあなたが新入社員の行動や気持ちを理解できないとしても、自分や同世代の仲間内だけで、彼らについての結論を出そうとするのは良くありません。結論づける前に、職場とは関係ないところで、新入社員と同世代の若者たちが集う場に参加してみましょう。


2. 霊媒師になる

 「人の気持ちになって考えろ」と良く言われますが、いざ苦手な人や嫌いな人の前に立つと、どうしてもその人の立場で考えることが難しくなってしまいがちです。 すると自分の考えに固執してしまい、有意義なコミュニケーションを図れなくなってしまいます。

 そんなときは「霊媒師」になってみてはいかがでしょうか。霊媒とは言っても、亡くなった方々に限らず、自分の好きな人や尊敬する先輩、上司の生霊を呼び寄せるのです。魂に乗り移られて、その人自身になったように振る舞い、考えてみましょう。 自分の祖父だったら...恋人だったら...上司のAさんだったら...イチローだったら...ポイントは、好きな人や尊敬する人になりきることです。とても不思議なことですが、それだけで自分の先入観の多くを取り除くことができます。

 この方法はコミュニケーションの場だけでなく、自分一人で何か考えるときにも有効です。 たった今からできることですから、ぜひ試してみて下さい。


3. 人の話は最後まで聴き、聴いているふりはしない

 人の話を聴く際に、途中で遮ってしまうのは良くないと言われています。 ビジネスの世界でも、まずは部下の話を最後まで聴く「傾聴」が、管理職の必須スキルだと捉えられるようになってきました。 本稿をお読みの皆さんの中にも、何かの研修や書籍などがきっかけで「傾聴」を意識するようになった方は、多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 私自身、「傾聴」の概念を知ってから、人の話を最後まで聴くことを意識してきました。 ところがあるとき、重大なことに気づきました。相手の話の前半2~3割を聴いたあたりから、先入観で勝手に結論を予測し、別のことを考え始めてしまうのです。 せっかく最後まで話してもらったのに、後半の7割は「聴いているふり」をしているのですから、傾聴の意味がありません。相手には最後まで喋ったという満足感は残りますが、実はコミュニケーションが成立していないのです。 こんな勿体ないことをしているのは私だけかと思っていましたが、様々な人を観察すると、どうやら同じようなことをしている方々もいるようです。

 人が話すとき、本当に伝えたいことは最後にポロっと言ったりするものです。 特に考えながら話すタイプの人は、この傾向が強いように思えます。相手の話を最後まで聴き、聴いているふりもしないこと。そうすれば、あなたが先入観で思い込んでいた結論が、良い意味でひっくり返るかも知れません。

 本稿では、先入観を排除するために私が工夫している3つのことをご紹介してきましたが、役に立ちそうなものはありましたか?
 皆さんも是非、ご自分の先入観を排除するために、様々な工夫を凝らしてみて下さい。

執筆:松本 良太
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

資料ダウンロードはこちら