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チームワークを高める方法

皆さんの職場ではチームワークを十分に発揮できているでしょうか?例えば、同僚やチームのメンバーが困っている時や、部署やグループの枠を超えて困難な課題に取り組む時を思い出してみてください。

一般的に良いチームには共通して以下のような特徴があると言われています。
 ・自律した個人がそれぞれの専門性や強みを発揮している
 ・メンバー同士が互いに弱みを補完し合っている
 ・メンバーが互いに刺激し、学び合っている
このような状態に達すると、チームとして個人の能力の総和以上の高いパフォーマンスを発揮することができるようになります。

しかし、残念ながら実際の職場ではチームの誰かが困っていても助けなかったり、ライバルと足の引っ張り合いをしたり、といったことが起きてしまいます。なぜ同じチームのメンバーでありながらそのような状態に陥ってしまうのでしょうか。次の3つのケースに分類して考えたいと思います。

1つ目は、そもそもチームの目標や活動自体にメンバーが納得できていない場合です。例えば、複数部署のメンバーで構成されたクロスファンクションのチームを結成しようとすると、それぞれの部署の利害や考え方が異なるため、チームの目標設定の段階で対立することがあります。 目標設定の段階でそれぞれが自分の目標や考え方ばかりを主張してしまうと、全員が納得する目標を設定することができず、チームを結成することが難しくなります。

2つ目は、メンバー同士の付き合いが浅く、互いの強み/弱みや好き/嫌いを把握できていない場合です。特に、組織の変化やメンバーの入れ替わりが頻繁に起こるチームでは、メンバー同士が互いをよく知らないまま同じチームで一緒に働くことがあります。 メンバー同士が互いの強み/弱みを把握できていないと、仕事で困ったときに相談する相手が分からなかったり、逆に自分の強みを生かせる仕事が与えられないなど、仕事の振り分けがうまくできないことが多くなります。また、互いの好き/嫌いを把握できていないと、相手に合わせた細かい気配りができなかったり、思わず傷つけてしまうこともあります。 その結果、最悪の場合チームが機能しなくなることすらあります。

3つ目は、成果主義の導入により個人目標の達成が優先的に評価される場合です。 少し古いデータですが、成果主義的な評価制度を導入している日本の企業は8割以上にも上るそうです[1]。 成果主義にも様々な形態があるので一概に一括りにはできませんが、一般的に成果主義が行き過ぎると自分さえ良ければ良いという考えが強まると言われています。 「足の引っ張り合い」とまではいかなくとも、自分の成果を出すのに精一杯で周囲にまで気を配っていられない、といった状況は皆さんにも経験があるのではないでしょうか。 また、あるグループで起きたトラブルの情報が共有されず、隣のグループでも同じトラブルを起こしてしまった、 という話もよく耳にします。個人の目標ばかりが評価されるようになると、チームに対して貢献しようとする意識が相対的に低くなってしまいます。

では、どうすればチームワークを高めることができるでしょうか?

まず、1つ目のチームの目標設定に納得できていないケースに対しては、互いの立場や考え方、やりたいことを互いに認め合い、尊重し合うことです。 同じチームのメンバーでも一人ひとりの置かれた状況は異なり、それぞれの考え方ややりたいことも異なるのは当然です。 ただ、チームとして結成しようとしている以上、チーム全員に共通する目的があるはずです。 そこを起点にして、互いの立場や状況を尊重しながら全員が納得できる具体的な目標を設定することが大切です。

2つ目のメンバー同士がお互いをよく知らないケースに対しては、仕事の合間や食事を共にする際に趣味やプライベートの話をすることです。 その際、同じ相手でも仕事の話とプライベートの話をするときは別人と話すつもりで明確に切り分けます。私の場合、そうすることで、仕事上は激しい議論や対立があったとしても、仕事とは切り離して一人の友人として接することができます。 個性や人格を互いに受け入れることができると、深い信頼関係が生まれ、相手の意見を尊重し、思いやることができるようになります。

3つ目の個人の目標達成が優先されるケースに対しては、個人の目標ばかりを評価するのではなく、チームへの貢献に対しても明確に評価することです。 これは必ずしも報酬や人事に結びつける必要は無く、むしろ感謝や賞賛といった感情を表現する方が、内発的動機づけが強化され、チームワークに貢献するモチベーションが持続し易くなります[2]。 たしかに、「ありがとう」「助かったよ」と本心から言われると、それだけで「やってよかった。またがんばろう」と思えるものです。

さて、皆さんの職場はどのケースに当てはまりますか?

【参考文献】
[1] "成果主義に関する調査結果の発表"社団法人日本能率協会
[2] "モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか"、ダニエルピンク著、大前研一訳

執筆:竹森 恵一
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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