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日本と韓国の製造業比較

 日本製造業が韓国に負けていると言われている。韓国の製造業を代表するのはサムスンであり、いまや売上、利益など3年連続で米アップル社なども抜きIT企業としては世界最高となる見込みだそうだ。なぜ、それほどまでにサムスンに代表されるように韓国企業が強くなったのであろうか。

 今回は日本と韓国の開発プロセス(製品開発の進め方)を比較し紐解いていきたい。
開発プロセスの比較には、弊社が2010年~2011年に実施した開発力調査の結果を用いた。

図1.日本TOP20企業と韓国企業の開発力比較(左)、
図2.企画の詳細比較(右)
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 図1からは、企画以外は日本が強いという結果が読み取れる。 かつて「JAPAN AS No1」と言われていた日本は、企画において韓国より遅れていることが分かった。

 本調査は、弊社がこれまでのコンサルティング経験を踏まえ、開発成果を生み出す「開発力」を「開発プロセス(製品開発の進め方)」と「人材(人の行動特性)」に大別し、それらを構成する15領域について定量評価している。これまでに220社、20,000名以上の技術者に対し調査をしている。評価は5点満点で、開発力が高い(理想的である)ほど高得点となる。

 本コラムでは15領域のうち5領域(企画・構想設計・詳細設計・手配・評価/検証)、約30の開発プロセスについて、日本企業80社と韓国企業約10社の調査結果を比較した。また、韓国企業は韓国を代表する企業が殆どであったため、日本企業TOP20のデータと比較した。

 最近では韓国企業からの新しい提案を日本でも見る機会が増えてきている。例えばサムスンでは、ユーザーが寝ると自動でスマートフォンの画面がOFFになる機能などがある 。CMでも見られたことがある方も多いかと思う。 他国の例を見ると、LGはインド向けのTVにクリケットのゲームを付けたり、12言語メニューを搭載してHITさせている。これは、クリケットが日本における野球、サッカーに該当し、12言語はインドが多言語の国のため搭載したとのことだ。
このことからも、韓国企業が企画を強化させ、実績を出しているといえるのではないだろうか。

 では、韓国は企画が強いといっても具体的には何が強いのであろうか。図2を見ていただきたい。
「現場」のいくつかは日本が優勢であるものの、殆どの項目で韓国が優勢であった。特に「ルール」においては、すべての項目で韓国が優っているという結果 である。 

 このことから日本が韓国に学ぶこととして考えられることは、企画のルール化は難しい・できないではなく、「ルール化を行うことが必要」と認識することだと考える。これまで日本では、モノづくりを見える化→ルール化して効率化してきた。米国でもKAIZEN(改善)という言葉が浸透するまで影響を与えた。これを企画領域にも適用していくことが必要と考える。

 富士フイルム HDの社長の中嶋氏は、欧州15年の経験で、日本人と欧州人の違いは、「欧州人は全体像をはじめに考えるが、日本人はそうではない」と言っている。例えば文章を書く場合に欧州人は枠から書き、日本人は文字から書くのだそうだ。
このことからも日本人の企画に対する弱さが垣間見えるのではないか。

 日本人は目の前のことをうまく進めることは得意だが、企画のようになにもない時点で製品の全体像を描き、皆に伝えることが苦手であると考える。苦手というよりは、そのような機会が少なくても、いわゆる日本人が得意と言われている「すり合わせ」や「阿吽の呼吸」などで乗り越えてきたと思う。しかしながら、急激に進むグローバル化のなかではそうも言っていられない。

 日本製造業が再度飛躍する ためのカギは、いち早く製品の全体像を描く「企画」を、グローバルを見据えたルールに定義し、社内の製品開発に携わる皆に伝える場を作り、現場で実行していくことが必要と考える。貴社でも取り組まれることを切に望んでいる。

執筆:福嶋 徹晃
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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