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アイデアの育成方法

 「世の中の著名なアイデアマンは、メモ魔だった」という話を良く聞きます。皆さんは、良いアイデアを思いついたときに、どのようなことをしていますか?私が実践していることは、手帳にメモをする、携帯から自分の会社のメールアドレスへ送るなどがありますが、本コラムでは、その中でも「人に話す」という方法をお勧めしたいと思います。

 なぜならば、メモや自分宛のメールはアイデアを思い出せる程度であるのに対して、人に話すことはその過程を通じて、アイデアを実行可能なレベルへ育成できるからです。その理由は、以下の3点に集約されると考えています。

(1)アイデアを自分から人に対して言葉や文章、絵などを使って説明する過程で、内容が整理されたり、新たな気付きを得たりする。
(2)アイデアに同調してくれる人が、それに関わる情報を積極的にくれるようになる。人によっては、新しい別のアイデアを持ってきてくれる。
(3)アイデアを否定する人もいるが、その否定に打ち勝つ方法を考えることで、結果的にアイデアがブラッシュアップされる。

 (1)や(2)はよく言われることですが、私は特に(3)がポイントではないかと思います。新しいアイデアを考える時に「否定するのは良くない」と言われますが、それは本当でしょうか? 私は「アイデアのネタを出す段階での否定は良くないが、アイデアをブラッシュアップし実行していく過程においては、否定することも重要である」と考えています。

 例えば、日本を代表する製造業のホンダやソニーも「上司に否定されて、やめてしまうような案は最初からやるな」という文化の元、様々なイノベーションを生んできたと言われています。否定されたぐらいで引っ込めるようなアイデアは、熱意を持ってやり遂げることができない。その結果、成功することもできないというわけです。そういう意味では、否定によってブラッシュアップされるのは、アイデアの中身だけでなく、実行段階において最も重要な当事者の熱意も含まれるのです。

 だからこそ、否定されたことは「否定された」で終わらせるのではなく、「良い課題を提起してもらった」「自分の熱意が試されている!負けるものか」と捉えるべきです。アイデアを前進させイノベーションを起こすのか、ただのアイデア止まりで終わるのかは、この捉え方が重要です。

 以上が、私が考えるアイデアの育成方法です。まずはアイデアを「人に話す」という行動からすべてが始まります。ぜひ実践してみてください。

執筆:那須 隆志
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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