多事想論articles

心の再起動

 今冬の全国高校サッカー選手権大会は富山第一高校と星稜高校の北陸対決の決勝となりました。そして、劇的な富山第一高校の逆転勝利は記憶に新しいのではないでしょうか。私はその中でも特に大塚監督が、0-2で迎えたハーフタイムに「どうせ神様はオレたちにドラマチックな展開を用意している」と選手に伝えたというエピソードが心に残りました。

 人は物事がうまくいかなくなると、その原因を掘り下げたくなり、次の行動に反映させようと試みます。次の行動でうまくいけばよいのですが、上手くいかなかった場合、こんなはずではないと、だんだんと視野狭窄な掘り下げをしてしまいます。そして、あれこれと考えた挙句、また次の行動が上手くいかないという魔のサイクルに入りこんでしまいがちです。このような、いわゆる「はまった」経験はみなさんにもあるのではないでしょうか。

 より良い結果を生み出すための自己振り返りは大切なのですが、狭まった視野で振り返ってしまうと却って迷走する場合があるのです。

 会社の中でも誰かがはまっている時は、その人の上司や先輩は大塚監督のような声掛けや負荷調整などの対応をすることは言うまでもありません。これによりはまっている自分に気づき、次に何をするかを冷静に考えることができるようになります。心が一度再起動されるかのように。ただ、自分の年齢や役割が上になればなるほど、周りが気づかせてくれることは少なくなります。 そのような中でも、なるべくはまらないために、自分自身で視野狭窄状態から抜け出すスキルとして、セルフリーダーシップスキルを身につけておく必要があります。

 そのスキルの一つとして、瞑想をベースにしたマインドフルネストレーニングという手法があります。

 マインドフルネスな状態とは、他者からの、または自分自身の評価・判断にとらわれず、「今、この瞬間」に注意を向け、自分に起きている感覚や感情を客観視して味わっている状態です。そして、瞑想を活用して、この状態を作り出すのがマインドフルネストレーニングになります。私が実践している簡単なやり方は、1日3分ほど目をつぶり、呼吸に集中し、ふと様々な感覚や感情が浮かんでも、観察し、手放すということを繰り返すというものです。例えば、瞑想中、仕事でうまくいかなかったシーンがふと浮かんできます。それに対して、周囲への憤りを感じたり、自分へのふがいなさを感じたり、といった様々な感情が浮かぶ自分自身に気づき、今、自分は、そのような感情を感じているのだな、と観察し、再び呼吸に集中し、その感情を手放す、といった具合です。

 非常にわずかな時間ですが、心が再起動されて、本来のパフォーマンスを取り戻せます。日々の業務を良くするため、また、何かアイデアを発想したいと考える時にも実践しています。ちなみにGoogleでもマインドフルネスを活用して独自にリーダーシップトレーニングを開発しており、一番人気の教育プログラムとのことです。Googleのエンジニアも厳しい開発環境の中でセルフリーダーシップの必要性を感じているのでしょう。

 昼夜問わず、様々な仕事を忙しく取り組んでいるリーダーにとって、とにかく仕事を前にどんどん進めることが大切なのは言うまでもありません。でも、常にフル稼働しているだけではなく、定期的な心の再起動をしてみては如何でしょうか。

執筆:星野 雄一
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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