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モチベーションを起こす「やりたい気持ち」と「やれそう感」

 開発現場の方と開発期間短縮といった業務改善活動を始める際、「改善活動を行なった結果、自分達の業務がどう良くなるのか」、「示してもらった改善案で本当に改善目標を達成できるのか」といった現場の方の声を耳にすることがあります。このように、活動当初、現場の方のモチベーションが低く、目標や改善案に対して不安や懸念を示される時があります。チームを動かす立場の方にも同様の経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。メンバーのモチベーションが低いのは「やりたい気持ち」が低い、「やりたい気持ち」に対して「やれそう感」が持てないことが主な要因だと考えます。

 モチベーションとは、人が目標に向かって行動を起こそうとするエネルギーを表し、「やりたい気持ち」とは人の願望を、「やれそう感」とはあるモノや手段でなら願望を叶えられそうだという感覚を表します。例えば、人の痩せたいという気持ちと、世の中にある○○式ダイエットについて考えます。ある人にとって、痩せたいという願望が「やりたい気持ち」であり、○○式ダイエットでなら痩せられそうだという感覚が「やれそう感」です。ある人が痩せたいと思っていても、○○式ダイエットは自分には難しいと感じてしまっては行動する気が起きません。逆に、○○式ダイエットなら痩せられそうだと感じても、痩せたいという気持ちがなければ行動しようと思いません。自分は痩せたいという「やりたい気持ち」があり、○○式ダイエットでなら自分は痩せられそうだという「やれそう感」を持って初めて、人は行動しようとするのです。

 では、どうすれば「やりたい気持ち」と「やれそう感」を持ってもらえるかを、前述の業務改善活動を例にとって紹介します。短縮目標を定めた活動初期の段階では、自分達に何の得があるのかといった意見を聞きます。短縮目標を達成できたとしても、現場の人達にとってのメリットがなければ目標に対する「やりたい気持ち」が生まれません。開発期間を縮めた結果、もっと良い商品を考えることに時間を掛けられる、開発数を増やすことで自分達に対する周りからの評価を上げられる、などの現場の人達のメリットを示すことで、「やりたい気持ち」が湧き起こってきます。
一方で、目標が高すぎる、そんなことできるわけがない、といった懸念の声もよく聞きます。達成したい目標があったとしても、「やれそう感」が持てなければ行動しようという気が起きません。これまでの業務改善活動を通して「やれそう感」を持ってもらうには、改善案によって日程が短くなることを理屈で理解してもらい、その上で改善案を体感してもらうことが有効だと考えます。例えば、他社実績や一般的な事例を示したり、開発期間を試算することで、改善案によって開発期間を短縮できることを理屈で理解してもらえます。さらに、実際に改善案を取り入れて体感することで、この理屈で実際に目標を達成できそうだという感覚を持ってもらうことができます。

 改善目標に対して、相手のメリットを示すことで「やりたい気持ち」を持ってもらい、理屈で理解してもらうこと、体感を通すことで改善案に対して「やれそう感」を持ってもらえます。そうして初めて、相手のモチベーションを起こすことができるのです。

 チームを動かす立場の方にとって、活動開始時にチームメンバーにモチベーションを持ってもらうことは共通する課題であると思います。是非チームメンバーの「やりたい気持ち」と「やれそう感」を導いてください。

執筆:林 裕之
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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