多事想論articles

研修での学びを業務成果に結びつけるために

 最近、プロジェクトマネジメントの実践力向上をテーマに教育をする機会が増えている。日程立案の勘所、進捗会議や検討会の効率的な進め方、レビューの質を高めるポイント、リスク管理の肝などの内容を実際のプロジェクトを支援しながら、理論の講義と実地訓練をあわせた形で教育を進めている。あるとき、受講者のAさんが実践して振り返った際に「今回習った内容は、実践してみて改めて腹落ちしました。講義だけではなく、 実践を踏まえて取り組みの甘さ を実感しないと、できるようにはならないですよね 」と言われたことが大変印象深かった。

 Aさんは、普段からプロジェクトの日程計画を立て、進捗会議や検討会の運営を行っている中堅のPMであり、全く取り組めていない新米PMではない。その分、普段から「取り組んでいる」という想いもあったのだろう。だが、あるべき姿や他社事例を知っているコンサルタントから見ると、タスク分解の粒度やリスクの抽出・管理方法、効率的な会議運営などで取り組みの甘い部分が多々ある状態だった。それらをコンサルタントから指摘され、自ら取り組みを改善した結果として、冒頭のような発言となったのだろう。

 ある調査結果では、研修での講義内容を踏まえて成果を出したという人は受講者の15%で、それ以外の85%の人は組織の成果に結びつけられていないそうだ。その内訳をみると、85%の人のうち「研修を受けただけ」にとどまっている人が15%で、残りの70%にあたる受講者は「現場で実践したが成果なし」だという。研修の効果が出ない原因を掘り下げると、「研修自体が悪かった」のは20%で研修の中身自体の問題は少なく、残りは「実践する上での場や支援が不足」か「受講者の選定・心構えが不適切」となっている。冒頭のAさんは、まさに「受講者の選定・心構えが不適切」にあたるといえる。

研修の効果

※ASTD ICE 2008 Robert Brinkerhoffの資料を元に作成

 研修での学びを業務での成果に結びつけるためには、「 意識が変わる⇒行動が変わる⇒アウトプットが変わる」というステップを踏む必要がある。
 最初のステップである 意識を変えるためには、受講者自身が「そうだな」と腹落ちすることが何より重要である。だが、意識が変わるための腹落ちには、業務での実践を踏まえた「自分自身の取り組みが不十分であることへの気づき」による行動の変化と、実際にアウトプットが変化したという「効果の体感」が必要不可欠だと筆者は考えている。つまり、逆説的ではあるが、一度、業務での実践を踏まえて気づきを得て、効果を体感するからこそ、腹落ちして意識を変えることができるのである 。 自分自身の「心構えが不適切なこと」に気づかなければ、どんなに研修を受けても、どんなに実践しても業務成果にはつながらない。

 弊社では、業務の「型」を教え、実務で使うための動機付けを与えるための「集合研修」と実践でさらなる腹落ち感を与えて実務で手法を使いこなせるようにするための「実務支援」を組み合わせて「教育プログラム」として提供している。研修後の実務支援では、実践での改善点を指摘し、行動改善に対して腹落ちさせる。また、業務で悩んだり、つまづいたりすることがあれば、できるようになるまでフォローして行動とアウトプットを変える。このような支援の結果、学びが業務成果に結びつくのである。あなたの会社は、研修の学びを成果に結びつけるための工夫をしているだろうか?せっかく学んだ研修の内容だからこそ、業務成果に結びつくようにしたいものである。

執筆:前田 直毅
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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