多事想論articles

一流を目指して

 先日、ノーベル物理学賞が発表され、LED開発に従事された3名の学者が受賞されました。研究への多大なる情熱とそこに向けた不断の取り組みに対して敬意の念は止みません。おかげ様で我が家もLED電球にさせていただき、恩恵にあずかっています。

 また、この件に関しては、受賞自体のみならず過去の訴訟に関しても話題に挙がり、様々な意見が述べられているようです。皆さん、様々なご意見があるとは思いますが、私はこの一連を通して、プロ意識と貢献ということを改めて考える機会を得ました。

 多くの技術者はある技術や製品などの一流のエンジニアを目指し、日々奮闘していると思います。それは何かの出来事をきっかけに自分の中で情熱が湧き上がってきたケースもあるでしょうし、上司から指名されて奮闘しているケースもあるでしょう。そして自分で失敗や努力を繰り返して、極め続けることにより、周りからもフィードバックを受けて自覚し、徐々にプロ意識なるものが醸成されている方もいるのではないでしょうか。いかなる動機であっても、極めていく過程においては数多くの取り組みをするための環境や場が必要ですが、特に企業においてはそれが与えられ、そして多くの人々からの支えやアドバイスがあるということは言うまでもないでしょう。

 ただ、一流を目指している過程においてはそのような周囲からの貢献を感じやすいのでしょうが、実際に自分の取り組みで成果が出て、評価されることを繰り返し、一目置かれてくると、周囲からの貢献より、自分"が"スゴイという意識が強くなってきます。そのような意識を持つことはリーダーシップの要素として必要なことだとは思いますが、周囲から貢献されている状態が消えることはないのも事実です。成果を出すために自分がその役割や取り組みに専念できるのは、周囲からのスゴイ協力があってのことであり、自分"が"スゴイではなく、自分"も"スゴイなのです。私がクライアント企業をご支援させて頂くと、「自分"が"」が雰囲気や言葉から漏れている方に会う時があります。自分"が"が強くなると、人から学ぶ姿勢が失われます。即ち学習のチャンスを自ら失うことになります。やがて成長は鈍化し、自分の貢献も少なくなるでしょう。

 一流というのは周囲からの支えを感じ、自分自身の能力を磨き続けることにコミットしつつ、その能力の発揮を通して、どうしたら周囲へもっと価値提供できるか、貢献できるかを考え続けられる人ではないでしょうか。そして、その姿勢こそが更なる才能溢れる人を引き寄せ、自分を更なる上のステージに上げてくれることでしょう。

 より高みを目指すために、お互い「自分"も"」と思えるような組織をつくりあげていきたいですね。私も鍛錬いたします。

執筆:星野 雄一
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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