多事想論articles

仕事の『意味』を考える

 新入社員の皆さんは社会人になって2ヶ月が経ち、職場の雰囲気や業務内容を少し理解してきた頃かと思います。そんな中、入社前に思い描いていたイメージとの大きな隔たりがあることに悩んだり、まるで運動部の新入部員がボール拾いしかやらせてもらえないように、単調で忍耐のいる仕事しか任せてもらえないことに悶々としたりしている方もいるのではないでしょうか。「簡単な仕事しか与えられないなんて、自分の能力を認めてもらえない」と考えてしまう前に、今自分が担当している仕事について少し考えてみるのはいかがでしょう。

 私が製造業のメーカーに新入社員として入社したときのことです。配属された部署で一番初めに任された仕事は、その部署の簡単な業務ではなく、部署宛てに掛かってきた電話を2コールで取り、用件・要望を伺う、もしくは先輩社員へ取り次ぐことでした。問い合わせ内容にその場で回答できるだけの知識がなく、まだ同じ部署の先輩社員の名前と顔も一致しない初日からその仕事を任され、私は、電話を掛けてきている相手に余計な時間を使わせ苛々させてしまうのではないかと心配し、気が重くなりました。暫く経ち、その部署には社内のあらゆる部署から、そして製品を納めている顧客や、製品の原材料を購入しているサプライヤからと、幅広い相手から電話が掛かってくることが分かりました。相手の所属や名前を聞き返してしまうことも何度もあり、問い合わせ内容を適切に理解できているか不安にもなり、更に憂鬱になっていったことを記憶しています。別の部署に配属された同期社員たちから、先輩社員の仕事を見学したり、机上で仕事の手順を学んでいるという話を聞いて、「短期間でも先輩社員の対応の仕方を見たり、そもそも部署の仕事の内容を少し学んでからでもよいのに」と愚痴をこぼしていました。それにも関わらず、後に自分が新入社員の教育担当となった際には、嫌がらせでなく、同じ仕事を初めに任せました。それは、私が初めにその仕事を任された『意味』が分かったからです。

 一番初めに任された「電話を取る」という仕事で、新入社員だった私が得た一番大切なものは『短期間での人脈形成』でした。社内のどの部署よりも、他部署と連携して仕事を進めていくことが求められている部署への配属であったため、いち早く社内外の相関図を覚えること、そして私自身の名前を覚えてもらうことが、「電話を取る」という仕事の『意味』であり、教育担当だった先輩社員の狙いだったのです。愚痴をこぼしていた頃には気付くことができませんでしたが、実際の仕事を進めていく中で、電話を掛けてきた相手が一緒に仕事を進める相手へと変わっていき、その後の仕事をスムーズかつスピーディに行うことができたときに気付くことができました。

 どんな仕事にも必ず『意味』があり、その仕事を任せた人の狙いがあるはずです。もし、今自分が任されている仕事に不満や、疑問を感じているなら、何故その仕事を任されたのか、その仕事はなんのためになるのか、また自分は何が会得できるのかとその仕事の『意味』を考えてみてください。任せてくれた人に狙いを聞いてみることもお勧めします。きっと、これまで気付かなかったその仕事の『意味』を見つけられ、あなたに寄せられている期待を感じることができるでしょう。

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