多事想論articles

世界と戦う

 日本代表チームの活躍で盛り上がりを見せたラグビーワールドカップ(大会はまだ続いているのですが、日本代表が敗退したため過去形としました)。日本代表チームは惜しくも決勝トーナメント進出を逃したものの、世紀の番狂わせと称された南アフリカ戦の勝利を初めとして3勝をあげ、日本人のラグビーへの関心は大きく高まりました。ラグビーを初めて真剣に観て、テレビ画面の右端に出てくるルール説明を真剣に読まれた方も多いのではないでしょうか。

 前回の大会まで、強豪国に体格、パワーで圧倒されてほとんど歯が立たなかった日本が、なぜこんな大躍進を遂げられたのか。その要因は様々挙げられますが、一言で表すと、エディー・ジョーンズHCを中心に、世界に通用する日本流を見出し、それを磨いたことであると考えます。ラグビーはほぼ素人に近い著者ではありますが、日本の攻撃は、少し前進し、攻撃の起点をつくり、そこからパスを回し、少し前進するということの繰り返しの中で、最後に得点に繋がるチャンスをうかがうという戦術で、他の強豪国が主流としている方法とは明らかに違ったものでした。ディフェンスも一人がタックルに行った後に、必ず二人目がボールを取りに行くということが、徹底されていました。それを80分間集中を切らさずにやり遂げる心技体、チーム力を日本流に身につけたたことで、感動すら与える成績を収めることができたのではないでしょうか。

 日本流で世界と戦うことは、スポーツの世界に限ったことではないのはご高察の通りです。世界の標準や、どこかの強国、成功している会社が提唱したものに追従しているだけでは全く未来がありません。例として、最近では、環太平洋地域による経済連携協定TPPへの参画(こちらは日本として譲るべきではないところはしっかりと守ったように報道されています)、中国が提唱しているAIIB、ドイツが提唱しているIndustory4.0、暫く前には、業績好調なサムソンのやり方など、枚挙に暇がありません。相手はどうやって世界を牛耳ろうとしているのかを冷静に研究、観察し、日本流の戦略を立て、それらに対応していかねばなりません。出来ることなら、それに対応するのみならず、世界のデファクトになるようなものを日本が逆に提唱して中心となって推進していくことを期待したいというのが本音ではありますが。一方で、一昔前、ガラパゴスと揶揄されたように、日本市場にしか受け入れられない製品、機能という意味での日本の独善では世界と戦えないのも事実です。これは成功体験のおごりや執着から生じてきます。周りに合わせることを優先として、真の日本流の良さを失ってしまってはいけませんが、独りよがりになってしまわないこともあわせて重要です。

 ラグビーでも、企業でも、国家の取組みでも、日本流を活かさない限り、日本が勝ち続けていくことは不可能であると考えます。そのために日本流を考え、実践出来る環境をつくり、それが当たり前の文化をつくって行くことが未来に向けて必要です。ラグビーではエディーHCが契約終了という試練を迎えていますが、それを乗り越えて2019年の日本開催のラグビーワールドカップで再び世界をアッといわせることに期待したいと思います。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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