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マラソン完走のコツ

 私たちは「日本の製造業の開発力を向上させる」というミッションを掲げ、日々お客様と共に業務改革活動を行っています。一般的には業務改革活動の達成には多くの困難があり、なかなかゴールのテープを切ることができないこともあります。開発業務が多忙となり業務改革工数が確保できなくなった、業績不振による予算の削減により予定していたシステム導入を断念せざるを得なくなったなどがよくある事例です。
 今回は遠くのゴールに向けて活動する業務改革目標達成のポイントについて、長距離を計画的に走ることが必要となるマラソンを例にお話します。

 私はマラソンが趣味で大会にも年に数回出場しています。大会でベストタイムを更新するために時間を確保して練習を行い、目標タイムを達成するためのレースペースを計画し、適したシューズや補給食なども準備し、睡眠をしっかりとってレースに臨みます。出場する大会に向けて数ヶ月前から万全の準備を行っていても、本番では思うようにレースを進めることができず、ベストタイムの更新どころか完走が危ぶまれることもあります。レース途中で足が攣ったり、おなかが痛くなったりして走ることがつらくなると「リタイヤしてしまおうか」という考えが頭をよぎります。こんな状態になったときに、ふたつのことに注力することでこれまで全てのレースを完走できています。

 ひとつ目はどんなにゆっくりでもよいので進み続けることです。マラソンにおいて足が痛くなってくると、一度止まって休息を取ろうと考えることもあります。しかし、これまで走り続けてきた推力を一度止めてしまうと再び走り出すためにはこれまで以上の推力が必要となります。その推力を上手く生みだせないと再び止まることになってしまい、さらに次の走り出しが難しくなっていくのです。

 業務改革活動においても同様のことが言えます。業務を取りまく環境が変わり、改革活動の優先順位が下がってしまうことはよくあることです。このようなときに改革活動を一度やめてしまうと次の再開タイミングがつかめず、どんどん先送りしてしまう事例をよく耳にします。このような状況において改革活動を再開するためには、トップからの命令や大きな不具合などが発生したことで改革の必要に迫られるなどの強制力が必要になります。もし、このような強制力が発動されなければ改革活動は二度と再開されないでしょう。

 ふたつ目は限界を超え倒れるまで無理に走るのではなく、時には目標を下げて走り方を変えることです。マラソンを走り始めるときにはベストタイムの更新を目指していますが、体調が変化し当初の目標達成が難しくなったときには少しハードルを下げた新たな目標を設定することで、最後まであきらめずにレースに向き合うことが可能となります。また、ゴール設定を見直したときには1kmごとのペースを変更するなどレースの進め方も見直し、新たな目標達成の実現可能性を高めることが必要となります。

 業務改革において適切な目標を設定することは重要であることは言うまでもないことでしょう。高い目標を掲げることで活動メンバーのモチベーションをあげることも可能です。ただし、状況が変化したときに目標を上手く変更できない場合には目標達成の実現性が低くなり、活動に対する"あきらめ"が生まれて改革活動を停滞させる要因となってしまいます。このような"あきらめ"を生みださないようにすることが長期間にわたる改革活動を成功させるポイントなのです。

 長期にわたる業務改革活動は様々な要因により上手く進まなくなることもあります。そのような場面では、私たちコンサルタントがコーチとして適切なゴールを再設定し、ペースをコントロールしながら改革活動メンバーをゴールまで導いています。自社メンバーで改革を推進しながらも、活動が停滞していると感じている方は、今回お伝えした2つのポイントに留意するとともに、経験豊富なコーチのアドバイスをもらうことも検討してはいかがでしょうか。

執筆:榎本 将則
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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