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呼吸によるストレス対処

 ストレス社会と呼ばれる現代社会。あるマーケティング会社の調査結果によると、日本で働く男女の86%が普段の生活で頻繁にストレスを感じており、そのうちの6割は「仕事内容」や「職場での人間関係」がストレスの原因であると答えているそうです。
 読者の皆さんはいかがでしょうか?上記の例に漏れず、日々の仕事を通して多くのストレスを感じている方も多いかもしれません。

 では、過度なストレスは私たちの体にどのような影響を与えるのでしょうか?長時間ストレスを感じ続けた、もしくは一時的に強いストレスを感じた時に生じる人間の生体反応はストレス反応と呼ばれ、精神面では不安、集中困難、思考力の低下、身体面では頭痛、めまい、睡眠障害など様々な症状として現れることが知られています。このような症状を発症すれば、仕事のパフォーマンスはもちろんのこと、私生活にも影響を及ぼす可能性があるでしょう。では、このような状況に陥るのを避けるために、私たちはどのような備えをしておくべきでしょうか。

 様々なストレス対処法を知っていることは、ストレスのリスクを下げるために私たちができることの1つです。私も日々実践して効果を感じており、職場でも簡単に実践できるストレス対処法の1つに呼吸のコントロールがあります。

 読者の皆さんは普段、ご自身の呼吸を意識したことがあるでしょうか?少し観察して頂くと分かるのですが、私たちは緊張や不安などストレスを感じている時、呼吸が自然と浅くなり、逆にリラックスを感じている時に、自然と呼吸は深くなります。
 これはストレスによって呼吸をコントロールしている自律神経(交感神経、副交感神経で構成される)のバランスが崩れるためで、ストレスを感じる際には交感神経が活発になって、その結果として呼吸が浅くなり、逆にリラックスを感じる際には副交感神経が活発になって、呼吸が深くなります。
 ここで興味深いのは、ストレスを感じている時に意識的に呼吸を深くすると、副交感神経が活性化されて体はリラックスを感じる状態に変化することです。つまり、呼吸をコントロールすることでストレスをコントロールできるのです。

 私は元々緊張しやすいタイプであり、以前はお客様への大事な報告会の前などは特に強いストレスを感じて「心ここにあらず」という状況になることがありましたが、そんな時に呼吸に意識を向けて浅くなった呼吸を、意識的に深い呼吸に戻すように取り組みました。すると、それまで感じていた強い緊張感は大幅に緩和され、良い緊張感を持って落ち着いて報告会に臨むことができるようになりました。因みにこれも習慣化され、現在ではストレスのかかる場面でも呼吸を特別に意識することはほとんどありません。

 最後に私が実践している呼吸法をご紹介します。呼吸法には大きく分けると胸で呼吸する胸式呼吸と、お腹で呼吸する腹式呼吸の二種類あります。通常、多くの方は胸式呼吸で呼吸をしていますが、私が実践しているのは腹式呼吸で、その中でも斎藤式呼吸法というものです。やり方は簡単で「①3秒鼻から息を吸う ②2秒間グッとお腹に力を溜める ③15秒かけて口から細くゆっくりと吐く」というたったこれだけです。15秒かけて吐くというのは少し慣れが必要かもしれませんが、ストレスがすっと和らぐのを感じられると思います。年末年始の忙しいこの時期にこそ、是非一呼吸入れてみてはいかがでしょうか。

(注)参考文献:「呼吸入門」斎藤孝 著、角川グループパブリッシング発行、2008年

執筆:布施 和敬
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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