多事想論articles

モノマネのススメ

●癖のマネ

 私は物心ついてから周りの人の癖を見つけては真似ることをよくやっていた。
 例えば私の学生時代の先生で、語尾に「・・・っね」って付ける先生がおり、授業中に何回「・・・っね」って言ったかを数えて、モノマネも友達に披露して、暫く口癖になって治らなかった。
 私自身も話している途中で鼻の穴が膨れる癖があるようで、社会人になって同僚にモノマネされた経験がある。
 皆さんも癖をモノマネしたりモノマネされたりした経験があるのではないだろうか?

●相手のモノマネをする効能

 モノマネは人の心理を読むことに利用できることを社会人になってから記事で知った。相手の仕草を自分で再現し、その時の心理状態を自分で感じる。私の場合は、モノマネをして私の今までの経験や出会った人と照し合せ、同じような経験をしていると、相手の考えていることが理解でき、相手の立場にたった行動がとれたりする。
 今思えば、私の学生時代の先生の口癖は、テストの前になると多くなる傾向だった。子供に躾をするときに「わかったよね?」と何度も言い聞かせている親と照し合せると、当時の我々生徒にちゃんと理解して貰いたくて、同意を求めていたのかもしれない。(当時、理解してほしいという先生の気持ちに気がついていれば、テストの点数はもっと良かったかも・・)
 現在の私の仕事では、お客様と抱えている問題点や今後の課題についてディスカッションする場面がある。その際、お客様自身の意見を話しているのか、周囲から言われている内容を思い出しながら話しているのかで、目線の動かし方が違う場合がある。お客様の特徴的な仕草、目線の合わせ方、声のトーン変化などを記憶し、メモと合わせて打合せ後にモノマネすることで、その人個人が訴えたかったことの理解に役立てている。
 相手の心理を読みとり、自分のアクションを考えるのに癖のモノマネは役に立つ。

●自分のモノマネをされたら考えること

 話の途中で「鼻の穴が膨れる」という私の癖は、私自身は気が付いておらず、同僚にモノマネされて初めて気が付いた。同僚が言うには、打合せなどで自分の意思を示すときに癖がでるらしい。
 癖は、自身の経験のなかで刺激と反応が反復動作などで強く結びついたものなので、癖がでる時にどんな刺激を受けているかを振り返ると、「癖のメカニズム」が理解できる。
 「鼻の穴が膨れる」癖を振返ってみると、小学校から高校まで剣道をやっていて、「呼吸を整え攻めに転じる」ときに着いた癖だと気がついた。

●「癖が出るメカニズム」を活用する

 癖が出るメカニズムが理解できれば、意識して活用できる。
 私の癖の場合、自分の意図と反する方向に議論が進んでしまった場合に、自分の癖を"モノマネ"して呼吸を整えると、自然と落ち着いて口(体)が動く。自分の心理をコントロールしたいときにその癖をあえて出してみる。
 イライラすると貧乏ゆすりをする人は、ストレスを感じている状態から脱したくて、アクティブに動いている人をイメージしているという説がある。立ち上がって歩いて会話したり、ホワイトボードを使って書いたり"アクティブな人をモノマネ"してみると落ち着いて話ができるかもしれない。

 相手の癖のモノマネで相手の心理をつかみ、自分の癖のメカニズムを活用して、自分の心理や行動をよりよい方向に移行させる。モノマネを自身の成長に応用してみては?

(注意:相手のモノマネを本人の前で披露するときは、信頼関係を築いてからにしましょう)

大作 孝男
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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