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開発組織編制 -A社の組織の狙い-

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 これまでの解説で以下の要点をご理解いただけたと思う。

1. 製品開発は『専門化』と『統合』という二つの特性を持ち、それぞれの特性を加味した組織設計が大事であること。
2. 開発組織には『機能別』、『製品別』、『マトリクス』の三つの代表的なタイプがあり、それぞれにメリット、デメリットがあること。
3. 製品開発はプロジェクト形式で取り組むことが一般的で、組織設計以外に製品開発プロジェクトの体制やプロジェクトマネージャの役割、権限に配慮が必要であること。

 以上をふまえ、第2回開発力調査における開発組織編制の評点が良かったA社の事例をもとに、開発組織編制の成功要因を紐解いていく。 A社は主にオフィス向けの複写機やプリンターといった情報機器を開発から生産、サービスまで手がる企業で、厳しいビジネス環境の中、ローコスト、短納期開発を余儀なくされ、印刷品質や印刷スピードなどの向上を常に追い求めていかなければならない。 しかも、モノクロからカラーへ、アナログからデジタルへ、ネットワーク化や環境性の対応など業界の技術的変化も激しく、これらに如何に上手く組織として対応していけるかどうかが会社の将来性を左右する鍵となっている。

 こうした環境から、A社は他社のスペックを睨みながらその隙間を見つけ、コスト重視の姿勢で対抗する商品戦略を取ることが多くなっていた。 こうなると、いつの間にかどんな嬉しさをユーザに提供するのかといった企画内容は置きざりにされ、他社製品とのスペック比較が話題の中心となってしまう。 しばらくすると、市場のニーズを正しく捉える力が弱り、設計者の商品開発への参画意識も薄れるという現実に直面したそうだ。 「自分の作った機械の使われ方を知らない」、「ユーザが何を不満に思っているのか知ろうとしない」、「カラーが必須なのか、モノクロで十分なのか? 印刷用途がわからない」など、今から考えると恐ろしい事態だったと担当者は振り返る。

 確かに、コンシューマ向けの商品であれば普段の生活でも接する機会は多く、顧客ニーズを捉えようと思えばそのチャンスは幾らでもある。 しかしビジネスユースの場合はそうもいかないだろう。 この様な事態を重く見たA社の経営陣は、設計者自らが顧客との対話を通じて真のニーズを掴み、そこで感じた自分の思いを企画書に込め製品化できる組織作りにのりだした。

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