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プロジェクトの活動計画 -少人数で開発を行っている2つの成功事例-

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A社の事例

 自動車部品を開発しているA社は、複数の自動車メーカから請け負っているが、特定部位を対象としており、また部品の種類も少ないため、比較的開発規模は小さい。

 A社には開発中のプロジェクトが一覧できる全体計画書があり、それに紐づいて個別に詳細な開発計画書を作成している。個々の開発計画書は部長がレビューを行い承認を行なっている。この開発計画の作成は資格を持った者が行うことになっており、DR(設計審査会)等の主なイベント日程の他、規模が大きくなる見込みがある場合は必要なマネージャやメンバの人数、また必要とされるスキルも含めて計画されている。

 開発製品毎に見積の基準となる標準開発日程と工数が用意されており精度は高い。実績と合わなくなれば見直しを行なうことになっている。1ヶ月に1回、本部長も参加した業務報告会があり進捗を更新している。業務報告会は適切な指示を仰ぐ場でもある。結果は全社に通知され誰もが知ることができる。高い要求仕様の開発の場合、開発が進むに連れて変更が生じ大幅な計画変更を余儀なくされることがある。ただしその発生頻度は年に1回程度と低い。

B社の事例

 エレクトロニクス製品のスイッチ等の部品を開発しているB社は、1件あたりの開発規模が小さく、企画から量産まで少人数のチームで開発を行っている。また一人の開発者が複数の案件を掛け持っている。

 B社では顧客との調整は開発部門の役割で、開発部門が顧客先で日程を決めている。そのため開発計画書は開発部門が作成し更新している。開発者の頭の中にある経験値から日程を決めているが、同様な開発を繰り返しており精度は高い。

 開発規模が小さいゆえに開発者が営業支援から企画・構想設計・詳細設計・量産まで幅広く製品ライフサイクルプロセスに関与するため、開発計画書に開発者の思いがしっかり入っているだけでなく、品質に対する意識も高い。

 開発計画書は開発部門から関係者にメールで配信され共有されるが、変更があった場合の連絡も開発部門から発信することになっている。

考察

 少人数で全体を俯瞰できるような規模の開発の場合、成功プロジェクトでも日程と工数見積を中心とした計画で十分であることがわかったが、規模が小さければそれだけを計画すればよいかというとそうではない。現に多くの失敗プロジェクトでも日程と工数の計画は行なっている。この2つの成功事例から推察した、日程と工数見積を中心とした計画でもプロジェクトが成功するための条件は以下のとおりである。

  • 繰り返しの開発が組織の主業務であること
    ⇒開発プロセスが組織標準的に、または属人的に安定している
  • 標準日程や標準工数を作れるほど見積もり精度が高い
    ⇒OJT等の教育・指導・コミュニケーションが出来ており開発者による能力差が小さい
  • 組織全体でリソース調整を行なう仕組みがある

 規模が小さいため計画が外れても大きな影響はでないと思われるかも知れないが、小さい分許容範囲も小さいので限度を超えて計画精度が落ちてくれば、玉突きによる他プロジェクトへの影響が無視できなくなってくる。規模が小さい開発プロジェクトでも失敗している例は、過去の開発と同じ開発と見誤り、さらにリソース調整が組織的に出来なくなっている場合におきている。計画精度を向上するには技術者の能力とプロセスを維持・安定させ、過去実績から見積もる等の根拠ある計画作りを行なうことが必要である。

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