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評価(テスト)の最適化 -A社の事例-

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(1)製品の評価内容の抽出法

 自動車部品メーカーのA社では企画段階で製品仕様の検討がスタートすると同時に設計要素や製品評価についての検討を始めている。製品仕様を見ながら従来機種で踏襲できる評価内容は流用するが、自動車部品の開発ということもあり、特に部品強度の評価内容については慎重に社内で定められた評価テンプレートを用いて再確認を行う。そしてそれ以外の全く新規の開発になるところにのみQFDを用い、新たな評価内容の抽出している。しかし、QFDで評価内容を抽出するだけでは評価が成立するか否かが判断できないため、短期間に従来品を用いた簡易試作を行って検証するか、もしくは過去の開発プロジェクトで蓄積されたノウハウや知見をデータベースでチェックして妥当性を見ている。またこの段階から設計FMEAを実施しており、作成するメンバーとしては設計を始め、実験、購買、生産技術など製品開発に関る全員で実施している。A社ではFMEAのようなリスク管理方法の導入は30年以上も前にさかのぼり、古くから製品不良削減に貢献している。なぜこのようにFMEAが形骸化せずにきちんと運用されるようになったかというと、過去に大きなクレームを出してしまったことが発端になっているという。そのときの教訓として、1つの部品の故障がシステム全体の大きなトラブルを生じさせるということを全員で身を持って経験したからであった。
 過去の不具合情報を活用するという点では、A社では外部不良に関する情報をデータベースに登録し、活用している。情報の取り纏めは品質保証担当者だが、実際にインプットする情報は開発に携わった各部門の担当者が部品ごとに集まって作成される。さらに、インプットした情報が確実に次期開発で活用されるようにするために、品質保証担当主催で専門者や開発担当者を集め、データのクリーニングを行っている。クリーニングの作業にはトラブル情報の書き方や表現、またそのトラブル対する対策・解決方法、再発防止策を検討することなどが挙げられる。以前はこのようなクリーニングは行っていなかったために次機種開発での活用度が思わしくなかったが、行うようになってからは格段に活用されるようになり、開発早期からFMEAにも頻繁に盛り込まれ、開発初期における問題解決に大いに役立っているという。

(2)評価計画の作り方

 A社では試作品に対する実験の実施計画(評価計画)を開発の初期段階で作成している。この実施計画は標準化されており、開発計画や評価設備の使用状況、人員(リソース)計画などを作成する際の検討材料として活用されている。また計画を作成する際に優先される評価内容は、設計段階の検討内容や懸念事項として挙げられている事柄が最優先であり、次に部品の強度面の実験を優先している。この計画は開発に携わる担当者全員のレビューをもって合意がとられ実行されている。

(3)設計検証と製品評価の考え方

 A社の場合は、製品評価を設計担当者と実験担当者で行っている。しかし、主担当としては設計者が製品リリースまで関っている。これは製品の特徴なのかもしれないが、製造工程における生産能力が思うように上がらない場合でも、その原因が設計起因の問題で生じるケースが多いためというのが理由であった。この評価体制の副次的なメリットとしては製品評価における問題の責任所在が明確になっているため、問題解決の時間を早めることができることが期待される。しかし、先に述べたように設計した製品の品質を最終的には第3者が評価する必要があることは言うまでも無い。

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