多事想論articles

機能割付け -先進企業の取組み(その2)-

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2.B社の事例

B社は、カーナビゲーション、カーオーディオ、カービジュアルの製品を手がける車載機器メーカー。エレキが製品の中心的役割を担っていたこともあり、現在も主幹業務は電気設計のグループリーダやPMが担当している。

■関係者全員による情報共有

B社では、メカ、エレキ、ソフトの機能別ユニットにした影響もあって、設計者の大半は自分の担当範囲だけを考えて設計しておけばいいという意識が強かった。 そのため、各ユニットで設計した内容が製品全体の振る舞いにあったものとならず、結合した時点で動かないというトラブルを引き起こす要因になっていた。 そこで、機能割付けの結果は、その後の開発作業の枠組み(ベース)となるため、各機能の担当者一人一人がその内容を理解しておかなければならないと位置づけた。 B社では、企画のとりまとめは製品全機種を取りまとめる開発のリーダや先行開発部隊の担当部長のどちらかが担当し、とりまとめ役がメカ、エレキ、ソフトのリーダクラスを1名ずつ召集し機能割付けの検討会を実施する。 特にまったく新しい機能を検討する場合は、週に1回のペースで半年から1年に渡って入念にこういった検討会を行う。 検討会の結果は、設計検討の根拠となるため、本来は議事録や報告書として正式フォーマットを使ってまとめるべきであるが、ホワイトボードのコピーやメールで記憶が鮮明なうちにすばやく共有するようにしている。 これまでは、『言った、言わない』の議論となることが多かったが、その件数はかなり減った。この設計検討の結果は、メカ、エレキ、ソフトがそれぞれの仕様書を作成する場合や、評価や試験項目としてリストアップしたものが本来実施すべき項目の全体をカバーできているかを検証する場合に役立っている。 また機能割付けの結果を見ると全体のモジュール構成や実現の妥当性に見通しが立つため、開発計画を立案するための基礎資料としても利用されている。

■決定事項の定期メンテナンス

いったん決めた機能割付けは関係者で共有できたら、それで終わりというものではない。開発が進むにつれ、思わぬ時期に競合が自社製品の性能目標を大きく超える製品を出してきた、設計が具体化され当初想定していたロジックでは思ったほど性能が出ないことがわかり、やむを得ずメカの構成を変えた、など自社を取り巻く環境やプロジェクトの状況は変わるものだ。1度決めた機能割付けはどんなことがあっても変えてはいけないというものではなく、環境や状況の変化に応じて見直すべきである。そもそも、ある程度時間が経つと結論に至る経緯や背景などはどこかに飛んでしまい、あれほど時間をかけて出した結論だったにもかかわらず、「なぜこの割付けにしたのか?」、「あの時はこんなことだとは思ってなかった」ということになりがちだ。経緯や背景が記憶から薄れてしまうと、結論に疑いが出てくる。そうならないように、週に1度関係者全員が集まり、機能を割り付けたときの経緯や背後にある前提条件に変化がないか?さらに顧客の要求に対する機能自身のありたい姿に変化がないか?を共有することを徹底している。

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