多事想論articles

"名手"って?

季節はもう、スケートなどウインタースポーツが旬な時期になってしまいましたが、少し、記憶をまき戻していただいて、8月、真夏の大阪で開催された世界陸上に遡ってください。世界のトップアスリートの活躍の前に、日本選手の多くが良い結果を残せなかったのは残念だったのを思い出した方もいるでしょう。

今回、ここでお伝えしたいのは、選手の事ではなくて、解説をやっていた伊藤浩司さんの解説ぶりです。
ある短距離レースで、有力選手がフライングをしました。その時の選手は直に止まらず、体にあえて力を入れるように長い距離を走り、その時に大量の汗をかいていました。それを見た伊藤さんは、
「この選手は、肉離れを起こすかもしれません。」と解説をしたのです。再スタート後、果たして、その選手は本当に肉離れを起こし、予選敗退となってしまったのです。

伊藤さんは往年の名短距離選手で、100mの日本記録は今も破られていません。名選手であったということは誰もが疑う余地はありませんが、名選手が必ず名解説者かというと"?"だと思います。しかし、伊藤さんは、汗のかき方、フライングの時の動きをみて将来的に起こる現象をずばり予測したわけです。そこでは、的確に一手先、二手先を読むということが行われていたはずです。解説者なら当たり前と思われる方もいるかと思いますが、なかなか出来るものでは無い、これこそ、まさに"名手"と呼べる解説だとつくづく感じた次第です。

自分を取り巻く世界に目を移すと、業務を効率よく遂行したり、良い家庭を作り上げたりするには、あなた自身が"名手"たる存在になり、前述の例と同じように事象と事象の因果関係から将来を予測し、行動しなくてはなりません。とは言っても、誰もが押しても押されぬ"名手"になれるわけではありませんね。しかし、予測、判断する力は訓練で向上することが出来ます。その時のポイントは、(1)予測に必要な主要素が何かを特定して、その状況変化を見ていくこと。(2)良い事、悪い事が、起こったときにその原因を振返ること。この二つを励行するだけで予測、判断する力は格段に向上します(良くある健康系のCMのように結果に個人差はあると思いますが)。あとは、やはり、先達のアドバイスを素直に受け入れる事です。

最初は、"似非名手"でも構いません。どんどん予測力、判断力を高める行動を取って下さい。そして、読者の皆さんが、予測力の本当の"名手"となり、良い社会人生活、家庭生活を送られる事を切に願います。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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