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禁煙成功の秘訣

 10月1日にタバコ税が見直され、ほとんどの銘柄が一箱100円以上値上がりました。タバコを吸わない私でさえも、日本のタバコ文化に何らかの変化をもたらしそうだと感じるほどの過去最大の値上げに対する喫煙者の反応は様々です。食費を削ってでも喫煙を続けるという愛煙家や、何十万円分も買い置きして出費を一時的に抑えようとする倹約家もいる中で、これを機にタバコをやめようとしている方々も少なくないようです。そのような方々の中には、過去に禁煙に取り組みながらも途中で挫折をした方もいるでしょう。禁煙は喫煙者にとっては大きな変革です。今回は禁煙をテーマに、変革を起こすために必要な要件を探ってみたいと思います。

 禁煙という変革にまず必要なことは、何をおいてもやめる動機、意思です。今回のような値上げや、体調を崩したというような明確な事象があればまだしも、自覚症状が現れない場合には動機は生じにくいものです。良い例が、今年の春先ごろにメディアを賑わせた、インドネシアで2歳児が1日40本ものタバコを吸っていたという話です。2歳児はやめる動機を持ち合わせているはずがありませんので、やめさせるには親の動機が必要です。ところがこの子の父親は「とても健康的に見える。問題はない」と、全くやめさせる意思はありませんでした。動機が生じた時には手遅れとならないうちに、法規制などの強制的な動機でも良いので、何か手を打って欲しいものです。禁煙は個人の自由ではありますが、明らかに変革が必要であるにもかかわらず動機が生じていない場合には、周囲が気づかせることも必要です。

 しかし、一過性の動機だけではなかなか禁煙は長続きしないものです。タバコをやめるために、タバコは体に悪いものだと思い込ませるとか、自分はタバコが嫌いだなどと自分に言い聞かせ続けるにも限界があります。私の知人は喉を患って禁煙宣言をしたものの、数ヶ月後に若者がおいしそうに吸っている場面を目の当たりにして思わず吸ってしまい、気がついたら元のペースで吸っていたそうです。喉の患いが治ったらその苦しみを忘れてしまったという、まさに喉元過ぎて熱さを忘れてしまったパターンです。このような事態を回避するには、相談できる専門家や経験者が必要であると考えます。地域によっては、医師が禁煙の進捗を確認してくれたり、順調に行かない時には相談に乗ってくれたりしているようです。導いてくれる信頼するに足る相談相手がいることで途中での頓挫を回避できるのです。それに加えて、一緒に取り組む同志がいることも成功確率を高める要因になります。禁煙サークルなるものも存在しているようです。また、同志となり得るのは喫煙者だけとは限りません。非喫煙者も何かの自己変革に一緒に取り組むことで、種目は異なったとしても同志となることはできるはずです。

 タバコをやめるという自己変革に限らず、変革は強い動機や意思だけで達成できるかというと必ずしもそうではありません。もしあなたが社内での改革や改善活動に取り組んでいるのであれば、一人で突き進むだけではなく、適切なアドバイスをしてくれる上司や有識者、共に進む同志を作ることにも力を注ぐべきです。アドバイザーや同志が加わることで動機は維持増大し、ゆくゆくは大きな成功やイノベーションに繋がっていくでしょう。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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