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「家政婦のミタ」と「面白い恋人」

 2011年の年末に放送されたテレビドラマ「家政婦のミタ」が、今世紀に放映されたドラマの中で最高の40%もの視聴率を記録しました。 ご存知の通り、「家政婦のミタ」とはサスペンスドラマのタイトルをもじったものです。もじったタイトルと裏腹な、シリアスかつ先が読めない人間模様を描いた展開が好評を博したものと思われます。 元祖家政婦のサスペンスドラマ「家政婦は見た」の関係者はシリーズも終了していたことですし、大らかにこの様子を見守っていたことでしょう。 特に両者の間で取り交わしがあったのかどうか分かりませんが、何故大らかにと表現したかというと、ドラマ放映の時期と同じくして、商標をもじって使われたことへの訴訟が起こったからです。 訴えられた商標は、大阪の新名物として新幹線ホームなどで売られている「面白い恋人」の発売元、訴えたのは北海道銘菓「白い恋人」です。

 大阪の定番土産はと考えると、「551蓬莱」、「一口餃子」などがあります。しかし、お菓子類となると新大阪駅では、「赤福」(三重県)」、「神戸プリン(兵庫県)」、「生八つ橋(京都)」など他府県のものがメインで売られていた印象が強いです。 そこに昨年救世主的に現れたのが、吉本興業らが発売した「面白い恋人」です。当然北海道の「白い恋人」をもじったものであることは品名を聞いただけで分かります。 私も何度か購入したくらいですし、売り上げも好調のようでした。 しかし突然、その「面白い恋人」が商標権侵害で「白い恋人」の発売元の会社に提訴されました。

 何人かのお客さんが間違って購入したとかで、このままでは信頼を失いかねないとのことのようですが、その状況はあらかじめ想定できたものであったのではないでしょうか。 そして、間違いなく未然に差し止めもできたはずです。「白い恋人」という商標は高い権威、価値、そして親しみがあると認識していたのであれば尚更です。 完全に信頼を失ってからというわけではないものの、失ってから慌ててという対応はしてほしくなかったと考えます。

 「白い恋人」が失ったものはそれなりに大きかったと思いますが、2011年、日本は震災が原因で本当に沢山のものを失ってしまいました。 それは形のあるものだけではなく、価値観、考え方など無形のものも含めてです。予想も出来ない力によって持ち去られたものも非常に多くあった事実は否めないものの、安易に想定外という言葉が横行していた気がしてなりません。 個人が、組織が、国が絶対に失ってはいけないものと認識して、先手で対応をしておけば失わずにすんだものもあったはずです。

 新しく始まった2012年は、失ったものを取り戻す年であることは間違いありません。また、それと同時に、改めて失ってはいけない守るべきものを強く認識し、絶対に失わないように行動する年でもあると考えます。 あなたが守りたいものは何でしょうか。それは目先を見るのではなく、自分が経験してきた過去を忘れずに、これからの将来に目を向けることでより鮮明に見えてくるはずです。 日本が輝きを取り戻す時を迎えられるよう、ひとりひとりが「一歩先」を正しく見て守るべきものを守る。そんな年にしたいと考えます。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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