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賞味期限

 先日職場にて、備蓄用の非常食や水が間もなく賞味期限切れになるということで、試食、試飲したい社員に配布しました。 元来、備蓄用ですから保存に適した状態として加工されるので、通常の食べ物や水より長めの賞味期限が設定されています。 そして賞味期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではないというのは皆さんご存じのとおりです。 非常食であればおそらく1カ月、2カ月過ぎても何ら問題はないだろうと思っていた矢先、賞味期限を9カ月過ぎた冷凍保存の太刀魚が回転寿司用の寿司ネタとして販売されていたというニュースを耳にしました。 冷凍とはいえ生食用なので食中毒等が起こらなくてよかったと思うものの、賞味期限というものは一体どう捉えるべきものなのかと改めて考えてしまいました。

 賞味期限とは、「"Best-Before":定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。 ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。 (農林水産省HPより)」だそうです。Best-Beforeが端的でわかりやすいですね。 では、その期限を過ぎた物はいつまで食べられるのかというと、食品の成分等である程度決まりますが、保存状態の影響も大きく一概には決められません。 ですので、前述の太刀魚は相当保存状態が良かったのかなと思う反面、それだけ管理が行き届いていたら出荷することなどなかったのではないかとも思えてしまいますね。
 (*最近は表記方法も変わり本当に安心して食べられる期限である消費期限という表現も多く使われるようになっています。)

 賞味期限とは食品に対してつけられるものですが、旬な状態を保てている期限と読み替えると、生活、製品、技術、ノウハウなど時間と共に変化しているものすべてにあてはまります。 そして、この見方においては、(1)賞味期限がいつなのかを見極めること、(2)賞味期限後の鮮度・旬度の変化を正しく読むこと、(3)鮮度・旬度の劣化を抑える策があれば講じること、の3点がとても大切です。

 例えば携帯音楽プレーヤーであれば、新機能が搭載されたりコミュニケーションなどの利便性が格段に上がったりした新製品が登場したら、いつそれに乗り換えるのかが課題となります。 最初にそのカテゴリーの新製品が登場するタイミングが賞味期限、使用可能限界線を下回り乗り換えないと気が済まなくなるタイミングが消費期限ということになります。(下図参照)

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賞味期限と鮮度・旬度の変化イメージ

 まず、(1)賞味期限の見極めという点では、携帯音楽プレーヤーであれば半年ごとに新製品が出るので賞味期限は半年とわかりやすいですが、発売が不定期なものに関しては、発売がいつごろになるのかを各種情報を取りながら予測することが必要です。 (2)賞味期限後の鮮度・旬度の変化の点では、新製品の魅力がどれほどなのか、周りがどれだけそれに乗り換えるのか、引き続き発売される新製品がどれだけあるのか等を考えます。たとえば図中赤線は魅力ある新製品が発売される都度、従来品の鮮度が下がっていく様子を示しています。 3度目の新製品の時には買い換えないと気が済まない状態です。それに対し緑線は従来品の魅力が新製品発売後も維持されている状態を示しています。 (3)鮮度・旬度の劣化を抑える策を講じるという点では、自分が持っている機器がバージョンアップできればそれを実施することが例として挙げられます。 そうすることができれば、図中青線のような経緯(バージョンアップは2回)をたどり、長期間満足して使えることになります。 そして図中の黒線は従来品に対して大きなアドバンテージを持つ、いわゆるイノベーションを起こすような新製品が発売された状態を表します。 かつてウォークマンやWindows95が発売された時はこのような状態だったのではないでしょうか。また、服飾の世界では毎年シーズン流行があるので黒線に近いことが少なからず起こっていると思います。

 最近は、Webの質問コーナーに「この製品は買い時でしょうか?」というような質問が多く寄せられています。それだけ圧倒的な魅力のある製品が出にくくなっているからかもしれませんが、食品以外のものに対しても使用者として賞味期限を考える癖をつけると買い時なのか否かの検討に役立つ気がします。 また製品の提供者には、新しいファンを獲得し、既存のファンに離れずにいてもらえる賞味期限サイクルを、世相を見ながら作っていってほしいと思います。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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