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採点

 日本が生んだ世界に誇れるシステムのひとつであるカラオケ。自宅の近くのカラオケ店は、毎週末の開店時刻に合わせて行列が出来ていて、ブームというよりも文化として根付いた感があります。当初は限られた題名リストの本から曲を選んで、レーザーディスクを置き換えてというところから始まったカラオケも、(若者にとっては最初からそれが当たり前の)端末で曲を検索、入力して、ネット配信になり随分と様変わりしました。それに加えて、最近のカラオケの目玉は、採点機能の高度化にあるようです。

 カラオケに興味のない方のために、少し説明を加えますと、音程はもちろんのこと、細分化された歌い方のテクニックまでをリアルタイムでチェックして、最終的に100点満点で点数を出すものです。その点数はネットでつながれていますので、過去に歌った人の中での順位も出ます。単なるゲームの域を超えて、例によって、カラオケで高得点を出すための攻略情報や、ノウハウの書き込みなども出回っており、最近は、プロの歌手とカラオケの上手い芸人などが対決するテレビ番組なども登場しました。番組では、プロの歌手が負けることもあり、それがまたとても面白かったりするわけですが、ある基準にのみ従った歌のうまさが定量的に評価されるので、歌い手が醸し出すパフォーマンスというか芸術的なものは評価対象でないのは言うまでもありません。もし歌手が高得点を得ようと練習したりしたら、歌手の味わい、芸術性が薄れてしまうかもしれません。

 技術と芸術という要素で見ると、今や日本が世界最強として君臨するフィギュアスケートでは、技術点と芸術点の二つで採点がなされています。芸術点は、「スケート技術」「技と技のつなぎ」「演技力」「振付け・構成」「音楽との調和」に細分化して評価しています。芸術点になぜ「スケート技術」が入っているのか、そもそも芸術は細分化できるのかなどの疑問などはあるものの、「うまい」、「すごい」というようなインプレッションを与えた場合には、きっと高い芸術点になるのでしょう。そうなるとたとえ技術的に下回っていたとしても、総合順位は上に行くということもあり得るわけです。

 芸術性に代表されるような客観的な得点や時間などでは評価できない、いわゆる定性的ものを定量化することは非常に難しいものです。企業の中でも、人材管理やプロセス管理などで、定量化が非常に難しいことを無理に細分化した挙句、誤った代用指標を定めてしまっている例を目にすることがあります。定量化は管理がしやすく、確かにあるレベルまでは必要であることは間違いありませんが、目先の定量値にばかり目を奪われていると、その人、その企業の良さをすり減らしてしまうこともあります。その尺度での唯一の正解、目標値を与える利便性がある定量値の利点は踏まえた上で、画一的尺度で測れない部分、突き抜けた部分も大切にできる企業、人が増えてくると、未来も明るいのではないでしょうか。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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