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ゲシュタルト療法による人の育成は是か

2013.2.25

 下に描いてある図を見た時、あなたはどちらが印象に残りますか。おそらく大多数の方が、右側の欠けた円が印象に残ると思います。人間は欠けているところに目が行きやすいという心理的特性が上手く表現された簡単なテストです。

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これは、心理学ではよく目にする ゲシュタルトの「欠けた円」です。この図はもともと、ドイツ出身の心理学者フレデリック・パールズが提唱したゲシュタルト療法から来ています。 ゲシュタルトとはドイツ語で「形」という意味で、この療法は、問題解決を図る際、出来ていない、不完全という特定なマイナス部分にではなく、出来ている部分、満たされている部分を含めた全体として一個体である人間を捉えて行こうという考え方です。何とも奥深い意味がありますので、詳細な説明は専門書に譲りますが、分かりやすくいうと、欠けているところばかりを気にせずに、満たされているところに目を向けましょうということです。

 世間一般的に、良いところを褒めて伸ばせとよく言われます。これに関しては全くの同感で、この図が表わす意味合いに通じるところがあるのではないでしょうか。出来ていること、良いところを認識して、そこを自分の軸にしていけるように導くことは、初期の人間形成において非常に重要な事です。そしてこのことは、何も幼少期のみを指して言っていることではなく、未経験な事を始める時、不得意な事をやらねばならなくなった時には大人にも十分に当てはまります。自分としての前進を感じる積み重ねで、小さいところからでも自分の自信、拠り所が生まれてきます。

 しかし、褒めて伸ばすことだけで、上級といわれるまで登り詰められるかというと、ごく稀であることは否めません。多くの場合、バランスがおかしくなります。一芸に秀でることは素晴らしいことですが、それを支える土台も強固にしていかないと、一芸も正しく使えなくなってしまいます。そうなっては元も子もありません。

 人として、専門家として、ある大きさの形なり中身が詰まって来た場合、すなわち、それなりに人間形成が出来た、成功・失敗の経験を詰めた、目標が明確に定まったという状況になった場合には、出来てない部分を真に強化できるステージに立ったといえます。なぜなら、容易でない弱点克服の鍛錬をする覚悟と、バランスを保てる自分があるからです。そうなると育成、アドバイスする側としては、弱みの克服のための指導となるわけですが、決して弱点のみを責めたり、過度のプレッシャーをかけたりすることでは、良い導きは決してできません。弱点を強化ポイントとして認識させ、改善させるバランスを持ったアプローチが必要です。近頃話題になっている、昔は有能な柔道家だった監督、幹部による暴力などは、金メダル至上主義という大きな外部要因があるとはいえ、指導の道でバランスを欠いた結末にほかなりません。

 何はともあれ、真剣に向き合うことが最初の一歩です。まずは、褒めて育てる。そしてあるレベルまで育ち、上を目指したい、自らの弱点克服をしたいと思えるようになるように促す。そこから強みの伸長と弱点克服のバランスを保って、次のステージの育成に切り替える。決して簡単ではないですが、こんな育成を主流にしたいものです。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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