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気にならなかったことが気になる

 今年の夏は記録的な猛暑となりました。日本はすでに熱帯化してしまったのではないかと感じるほどの暑さは、各地で様々な話題を提供してくれました。その中でも、四万十市が記録した観測史上最高となる気温41度は、強烈な印象を残しました。市民の方は、日中室外での活動は成り立たないのではと考えざるを得ません。

 しかし、記録更新した気温に対して、観測の基準を満たしていないのではという指摘が挙がっているようです。四万十市の最高記録を更新した地点は、すぐ近くにアスファルトの駐車場があり、その反射熱の影響で上がり易くなっているのではないかという指摘です。気温の測定といえば、私が子供のころは、芝生の上の白い百葉箱で測り、実際の体感よりはずいぶんと快適な環境で測っているという印象のものでしたが、今は、電気式温度計を、直射日光に当たらないように、通風筒の中に格納し、芝生の上1.5mの位置で観測しています。また、建物や人工熱源に対してや、設置時の考慮事項として、
 1.最寄りの建物や樹木からその高さの3倍程度の距離を置いて設置する。
 2.人工の熱源から十分に離す。
 3.屋上への設置は避ける。
 4.自然な環境に設置する。
 5.寒冷地での設置では積雪に注意が必要。
が規定されています。
(気象庁HP参照)

 この考慮事項は見ていただければお分かりになるとおり、かなり定性的であり、今まで特に気にも留められずあいまいに運用されてきたことが手に取れます。今回の指摘は、観測史上最高を記録したために、今まであまり気にならなかったことが、気になったための指摘です。今回の場合、日本の熱帯化という気象変化が、気にならなかったことを気にさせたといえます。来年以降も温暖化、猛暑が続くとすると、最高を競い合うといった次元とは別の、より厳正な観測が求められるようになるかもしれません。

 また、猛暑は、私たちの生活やビジネスに"気にならなかったことが気になる"ことをいろいろともたらしています。身を守る必要性が生じ、スーパーなどで熱中症対策グッズが売られているのはもちろんのこと、就寝時にもエアコンをつける人にとって、今まではあまり気になっていなかった、就寝時の温度が気になるようになったことに着目し、就寝時にはやや低めの温度とし、数時間経過すると1度ほど高めに変化し、維持するといった繊細な機能がついているエアコンが新しい顧客を掴んで、よく売れているようです。

 気象変化に限らず。気象以外の多種多様な変化が我々の周りには次々と起こり、今まで気にならなかったことが気になるようになります。職場でいえば、若者の価値観、業務支援のITシステムなどがわかりやすいでしょう。職場や自分の価値観・常識は出来れば変えたくないという人が多いものですが、気にして、そして対応していかねばなりません。様々な変化が気になった時こそが、自らも変われる機会、新しい何かを生み出すチャンスと捉えて進んでいきたいものです。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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