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年齢に関係なく成長できる

 今年はまもなく始まるソチオリンピックに加え、サッカーのブラジルワールドカップが開催されるスポーツイヤーです。日本選手の活躍が期待されるこの二つのイベントそれぞれで注目したい二人の選手がいます。スキージャンプの葛西紀明選手とサッカー日本代表MFの遠藤保仁選手です。

 葛西選手と遠藤選手に共通することがあります。まず、最年長であることです。葛西選手は41歳、遠藤選手は34歳。科学的なトレーニングの進歩により選手寿命は延びる傾向にあり30代、40代で現役を続けている選手も増えてきていますが、第一線を退いていてもおかしくない年齢です。しかし、それを覆し、ピークを過ぎた選手としてではなく、本当のトップ選手として活躍されています。そしてもうひとつの共通点は、華々しい場面を目の前にして自分がその場に立てなかった経験を持っているということです。葛西選手は1998年の長野オリンピックの選手には選出されていたものの、スキージャンプ団体の金メダルメンバーには選ばれませんでした。遠藤選手は2006年のドイツワールドカップメンバーに選出されていましたが、ゴールキーパーを除いて唯一出場機会を得られませんでした。いわば、栄光を目前で掴み損ねた経験をされているわけです。その悔しさは大きなばねになっていると思いますが、年齢に関係なく成長できるという信念を貫き通して自分のスタイルを持ちながらも、年齢と共に手段を変えながらのトレーニングを継続できたからにほかなりません。

 ベテラン選手が第一線で活躍できるのは、決してスポーツの世界に限ったことではありません。ビジネスの世界では、人も、その集合体である会社も、むしろスポーツよりも選手寿命を長くできる可能性があります。しかも、華々しい成功体験を持ち、それに執着してしまっている人よりも、隣で活躍している仲間、ライバルを悔しい気持ちで見てきた経験がある人の方が、自分のスタイルに磨きをかける必要性を持ち、成長できるはずです。例えば、昨今、効率化のあまり業務が細分化されている製品開発において、製品全体を見渡した経験をもつベテラン社員が、レビューのノウハウを身につければ、バランスのよい製品に作り上げていく過程において大きな力になりえます。また長年培ってきた経験に、ひとつ新しい武器(専門外の知識や考え方など)を身につけることが出来れば、新境地を切り開くことも可能です。

 年齢に関係なく多様な形で成長することは可能です。あなたがベテランの域に達していたとしたら、今までを振返ることで思いを確かめ、自分なりの成長の鍵を掴んで、長く活躍して欲しいと思います。あなたが若手や脂の乗り切った中堅クラスであるならば、オリンピックで、ワールドカップで、そしてあなたの会社で第一線で活躍するかっこいいベテランの姿を目に焼き付けてください。そして成長し続けて、いつかそうなってください。



執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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