多事想論articles

自分らしいパフォーマンス

 多くの日本国民の皆様に寝不足と感動をもたらしたソチオリンピックが閉幕しました。今回のオリンピックを通して、私が改めて強く感じたことは、メダルが取れたか否かに関わらず、自分らしいパフォーマンスが出来たのかどうかが、選手自身の満足度を測る上で大部分を占めていたということでした。

 スポーツの世界では、よく心技体といわれます。技のレベルはオリンピックの前にほぼ決まってしまいますので、緊張する(緊張しなかったとインタビューに応えていた選手もいましたが)本番の大舞台では、心と体が変動要素となり、心と体の一体感が出せた時に、自分らしいパフォーマンスとなります。それが実現できれば、不利な自然条件、審判の不明瞭さなどはどうでもいいものになるのではないでしょうか。それはたとえ最高の結果がついてこなかったとしても、です。今回のソチオリンピックでもたくさんの選手が心と体の一体感を示してくれました。例えばモーグルで4位となった上村選手は滑りに対する評価尺度が近年変わったものの、自分のスタイルの滑りを貫きました。また、ひざの負傷や病気を抱えながら戦ったジャンプの伊藤選手、竹内選手は体のマイナスを心の部分で大きくカバーし、その時できる最高のパフォーマンスが出せたようです。これらは心と体がまさに一体になったからにほかなりません。もちろん、それまで培ってきた高い技があってこそであるのはいうまでもありませんが。

 そしてこれらの選手のパフォーマンスを観ていると、心と体が一体となったなんともいえないリズムというか良い勢いというものが感じられました。ジャンプのようなわずか10秒足らずの競技でも、カーリングのような激しい動きが少なく競技時間が長い競技でもリズムが存在すると思います。そこで思い出したのが、私がコンサルティングを始めて間もないころに、クライアントの製品開発部長が言っていた「仕事で良いパフォーマンスを出すにはリズムが大事。リズムが崩れた仕事は、一時的には出来ても続かない。リズムを作れるまでやらねばならない」というフレーズです。最初に聞いた時にはピンと来なかったのですが、自分の仕事をそういう目で見てみると、確かに良い仕事をしている時には、リズムがあるなと感じました。仕事においては心(メンタル)と頭(知識や戦略)と体(フィジカル)が、リズム感をかもし出す源泉になります。高いレベルで心頭体が一体となったときに、自分らしいパフォーマンスといえる、ブレイクスルーが生まれたり、社会人として、人としての成長が出来た実感が持てたりします。心頭体がばらばらである場合には、継続していくことは難しいでしょうし納得できない自分がいます。新しい挑戦などの場合には、より頭をプラスにするための学習や調査などが必要になるでしょう。一方で、長時間の緊張するシーンが続く場合には、時を見て休息、リラックスすることも必要でしょう。

 情報氾濫、スピード社会の中では、多くのチャレンジが必要となり、ストレスも多分にかかると思います。その環境でリズム感のある自分らしいパフォーマンスを出していくために、心頭体という見方で自分を改めて見て、バランス良く向上させていって欲しいと思います。


 

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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