多事想論articles

管理職として果たすべきこと

 まず、ある会社での開発課A課長と部下Bリーダーの間の出来事をお読み下さい。

Bリーダー:「A課長、試作製品の検証開始が迫っており、調達を通して試作部品の発注をしていると間に合いません。」
A課長  :「それは困ったな。検証遅らせるわけにいかないし、何か方策はないか。」
Bリーダー:「以前取引のあったメーカーに聞いたところ、明日中にオーダーくれれば大丈夫だそうです。何度かこういう形でうちの会社から仕事を請けたこともあるそうなので。社内規定的には問題は無さそうです。これでやらせてください。」
A課長  :「そうか。それじゃ首尾よく頼む。」

 この結果、無事検証開始の期日には間に合ったので、プロジェクトとしては事なきを得ました。しかし、通常と異なる発注をしたために、後日の部門長会議の場で、調達部長から「通常フロー以外でやられると当月集計に反映できない。月次収支が狂うと、多方面に迷惑がかかるといつも言っているのに。開発は自覚が足りないな。」と他部門責任者もいる前で、A課長は叱責されてしまいました。その場でA課長は、「Bリーダーが勝手にやってしまったので、反省させます。」とその場しのぎの発言をしたようです。その後、職場に戻り、Bリーダーに向けて「調達に事前連絡しないとは何毎か。社長もとても怒っている。そもそも遅れるような仕事しているからだめなんだ。二度とこんなことが起きないように再発防止策を考えろ。明日また報告しに来い。」と言い放ってしまったのです。Bリーダーは、プロジェクトの遅れを回避したという成果も出したし、忙しい中A課長に言われて別のプロジェクトも抱えているのにとの理不尽感を抑えながら、再発防止策を翌日提示しました。しかし、「まだ甘い。」と突き返される始末です。困り果てたBリーダーが廊下を歩いていると、かんかんに怒っているはずの社長にばったり会ってしまいました。Bリーダーは真っ先に「この度は大変申し訳ありませんでした。」と最敬礼で謝罪したところ、社長は、何の話か全く分かった様子も無く、「また何かやらかしたか?元気がいいのもほどほどにな。」と肩を叩いて激励までしてくれました。

 このあと、A課長とBリーダーの関係が壊れたのは予想の通りです。A課長は人前で注意されたことに対して、部下に対して、大人気なく怒りをぶつけました。また、社長という名前を出して、虎の衣を借る狐にさえなりました。Bリーダーは、混乱を招いたのは事実であるので、確かに段取りが不十分であった反省は必要でありますが、事前に承認ももらっていたことですし、結果としてプロジェクトを前に進めました。それに対して、悪かった責任を転嫁され、嘘までつかれて、後ろから刺されたわけですから無理もないでしょう。

 読者の方は、階層は様々ありますが、ある集団の責任者である方が多いと思います。入りたての新入社員と完全な個人事業主の方以外、ほぼ全ての方が該当するといってもいいのと思います。となると、皆さん管理職と呼ばれる立場に当てはまるため、管理職に求められる振る舞いとは何か?との問いに、自分ごととして答えなければなりません。また振舞わねばなりません。その答えは先の出来事にヒントが沢山あると思います。メンバーに対しては、決して嘘はつかず、誤りは自分も含めて諭して直すこと。業務全体の優先度・段取りを正しく捉え、前に進めること。上位の管理者または外部へ対しては、成果は正しく伝えること。悪い点があったとしても、自分の管理する集団に対して、責任逃れの物言いをしないこと。必要な時には潔く謝罪できることではないでしょうか。こう書くと、わりとシンプルに定義できるものです。ところが、組織関係、人間関係は複雑ですし、実際、管理者として壁にぶち当たり、役割を果たせなくなってしまった人を何人も見ています。A課長のような立場であれば、振返りをして、自分の非もメンバーの非も認め合った上で、うじうじしないで、方向転換していく、切換力を向上していくことが必要です。一方でBリーダーのような厳しい場面に遭遇しても、腐らず、振り回されない意識を持って進んで欲しいと思います。たとえその上長からの刹那的評価が下がったからといって、気にして欲しくはありません。人間関係はひとつの所にとどまることはありませんし、捨てる神あれば拾う神も現れます。一生続く人間関係というものを前向きに捉えて生きていきましょう。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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