ドクターG
あなたは、「総合診療医ドクターG」(NHK)というテレビ番組をご存知でしょうか。患者が病院を訪れた時の症状を起点に、病名を探り当てるまでの謎解き推理エンターテインメント(NHK HPより)です。番組の構成としては、患者が病院を訪れると、まず異変が現れている、または違和感がある部位とそこの症状を訴えるところからはじまります。そして最終的には、最初に訴えられた症状からは全く想像がつかないような病名に到達するというものです。名医のアドバイスを基に、難解な症例をさまざまな症状から突き止めていくプロセスは、医療に詳しくない私のような視聴者でも爽快かつ納得です。
5年前に亡くなった私の父親も、胃が痛いと言っては胃腸科で胃薬をもらい、動悸がすると言っては、しばらく安静にすると局所的な対症を繰り返しましたが、病状はよくなりませんでした。その後、血液のがんであるリンパ腫の病だと判明したのは、かなり病状が進行してしまってからでした。胃や心臓に症状が現れたのは、その周辺のリンパが腫れたことによって臓器にストレスがかかっていた為だとの説明を訪れた大学病院で受け、症状から真の原因にたどり着くのは容易でないことだと痛感したことも番組に引き込まれる所以でしょうか。
現れる症状だけからでは真実が見通せないことがあるのは、病気に限ったことでありません。
① スマホのバッテリーの減りが早かったのでバッテリーを交換。でも直らなかった。結局、電力消費の激しいアプリが
悪さをしていた。
② ダイエットの成功事例から、○○ダイエットをやれば成功すると思ってしまう。実はその効果は微小で、ほかに運動、
睡眠などの管理も合わせてやった結果だった。
このように症状が現れ、目立ちやすいところに、人はとかく引っ張られます。
事象、現象、症状をドクターGのようにすべて整然と整理し、真実に到達させるのは、専門知識と長年の経験が無ければ難しいのは事実と言わざるをえません。しかし、自分が関わっている世界においては、たとえ専門知識や経験が不足しているとしても、少しでも真実に近づきたいと思いませんか。そう思ったら、いつもよりも敢えて見る空間範囲を広げてみる、
ドクターGの番組のタイトルを改めて見てみると、"総合"診療という文言が入っています。多様性、個人重視の世の中になればなるほど、総合的、全体システム的な視野の重要性を感じずにはいられません。
執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。