コンサルティング事例 case study

設計手法の習得とプロセス改革による開発力向上と設計者の意識変革 株式会社ニコン インストルメンツカンパニー様 ‘開発力強化プログラム’

背景・課題

製品システムが複雑化、特定のエキスパートに依存した開発が困難に

製品名:CNC画像測定システムNEXIVシリーズ

製品名:研究用倒立顕微鏡 エクリプスTI-E

ニコンインストルメンツカンパニーでは、顕微鏡、測定機、半導体検査装置などライフサイエンス分野から主要産業分野に至るまで、幅広い製品の開発・製造・販売を行っている。これらの製品では、先端技術の動向や市場の変化を精度よくキャッチアップしつつ、信頼性の高い機器を必要とされるタイミングで顧客へ提供することが求められている。従来は、製品ごとに精通したエキスパートが製品全体を詳細に把握しながら開発を進めていたが、製品システムの複雑化に伴い、特定のエキスパートに依存した開発が困難になりつつあった。さらに、売り上げ拡大、新規顧客の開拓というカンパニー命題に対して、チームで効率よく製品開発を行い、開発後の手離れをよくする必要にせまられていた。そのような状況の中、開発力強化プログラムはスタートした。

プロジェクトの目的・ゴール

エキスパート依存の設計からチームでの設計へ 「改善活動が継続的に実施できる組織」への風土改革

図1.開発力強化プログラムの実施
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エキスパートに依存した設計からチーム設計へと組織の風土改革を実現するためには、その組織に関わる人の行動そのものを変えていくことが必要であり、人の行動を変えるためには、道具・手順を変え、その人自身に変革の必要性に気づいてもらうことが必要になる。今回、改革実現に向け、この3つの切り口を軸に取り組みを行った。すなわち、道具の変革としての「手法習得」、手順の変革としての「開発プロセス改革」、変革の必要性に気づく「意識改革」である(図1)。

施策と手順

実施事項(1)手法習得:開発対象の見える化による共通認識の構築と源流に立ち返った設計業務の推進

「要件ばらしとリスク管理」(関連課題解決メニュー: 開発の見える化 )
顧客ニーズを的確に精度よく把握するために「要件ばらし」を導入した。これにより機能や操作性だけでなく、性能、信頼性、コストといった非機能要件も網羅的に把握できるようになる。さらに、数値化、パラメータ化できるまで「要件ばらし」を進めることで、不明瞭な部分を可視化でき、懸念点を「技術リスク」として抽出することが可能になる。抽出した「技術リスク」は対策を立て、管理表を用いて管理することで問題点として発覚する前に対応が可能になる。本活動を設計チームで実施することにより、要件の抜けもれが補完でき、メンバ内で共通認識を持って開発できるようになっていった。現在では、構想設計段階までに必ず実施するタスクとして、組織に定着している。

「Lean Design」
革新的なVE/VA手法の一つとしてLean Designを採用した。設計、製造、品証担当者が2週間を費やし、組立作業、設計問題の可視化と分析を実施し、設計代替案を検討する。検討結果は2ヶ月の実装設計で済む最小限の変更レベルから新たな試作・開発を行う革新的なレベルまで様々だが、20年間にわたってコスト削減を繰り返してきた製品でも300件を越える設計の簡素化アイデアを出すことができ、当初のコスト削減目標を上回る実現手段を導き出した。これこそが源流に立ち返った設計業務である。

実施事項(2)開発プロセス改革 ドメインの異なる製品開発においても共通適用できる開発プロセスの構築(関連課題解決メニュー:業務プロセス最適化)

複雑化したシステム開発の業務パフォーマンスを向上させるためには、既存の社内規定類やその運用方法を見直し、開発製品や実務内容に適した開発プロセスを再構築する必要があった。開発規模や製品特性によってテーラリングできる開発プロセスと、開発の適切なタイミングでQCD達成状況を確認するためのGateを全設計マネージャで定義し、測定機や顕微鏡など異なる製品開発においても共通に適用可能な開発プロセスを構築した。  また、開発プロセスは定義するより運用を継続する方が大変である。そこで、製品分野を越えた合同推進チームI-PIT(Instruments company Process Innovation Team)を発足し、開発プロセス浸透に向けた啓蒙、推進活動を行った。I-PITメンバは、製品リーダや中堅設計者から選抜されるが、人材育成の一環としても考慮されており、1年前後を目処にメンバをローテーションする取り組みも行っている。

実施事項(3)意識改革(関連課題解決メニュー:技術者力強化)

導入した手法・プロセスが定着し、効果を発揮するかどうかは、人の意識が変わるかどうかに左右される。今回はチーム設計を推進していくために、「ARMSセミナ」で手法も含めた共通認識をつくり、「会議活性化」の取り組みを通して意識を変えていった。

「ARMSセミナ」技術者の技量を向上させるセミナで手法の有効性を体感
同一の製品を開発していても、メカ、光学、エレキ、ファーム、アプリと開発分野が複数関係すると、分野間での連携が希薄になってしまうことがある。ARMSセミナでは、技術者の技量を向上させる思考プロセスおよび考え方の有効性を体感してもらい、チーム設計力の強化につなげる取り組みを展開。その意義は受講者からも高く評価され、実業務での問題解決を検討する場面などで広く実践されている。

「会議活性化」日々の進捗会議を通してチーム設計のパフォーマンス向上し、意識を変革
プロジェクトの進捗会議など、日々の会議を改善していくことで、議論の効率化や、決定事項の共通認識など、チーム設計のパフォーマンス向上のための基盤を構築した。設計担当者には、準備、進行、議事録などの役割分担を持ち回りすることで、ファシリテーションスキルが自然と身に付き、相手の意図を読み取る、会議の雰囲気を読み取る、といった1ランク上の進捗会議が運用できるようになった。

成果

部門間の壁が払拭され、コミュニケーションの活性化を実現

図2.iTiD-INDEXを用いた開発力調査の比較結果
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2008年度に実施したiTiD INDEXを用いた開発力調査の結果を2006年度の実施結果と比較すると、取り組みを行った手法習得、開発プロセス改革、意識改革に関連する項目は、測定機開発、顕微鏡開発ともに30%以上向上していることが確認できた(図2)。3つの軸が偏ることなくそれぞれバランスよく伸びており、風土改革の成果が定量的にも把握できた。また、今回の改革の結果、手法、開発プロセス、意識が共有されたことにより、部門間に存在していた見えない壁が払拭され、情報交流やコミュニケーションが活性化されている。ニコンインストルメンツカンパニーでは、iTiDの支援が終了した現在、I-PITメンバを中心に、流れるような製品開発の実現に向けた「Stream活動」の名のもと、更なる改善に日々取り組んでいる。

お客様からの声

ビジネス書に書いてある一般論と違い、等身大のプログラムが立案できた

ニコンインストルメンツカンパニー 開発統括部長 根井正洋様

開発力強化活動は、本質的には目に見えない部分の改革にあります。自発的に、遅延なく開発を行い、かつ、継続的に改善活動を行っていけるような風土を作り上げることが狙いです。iTiDの方には実情を知るための調査から入っていただき、その結果に応じた改善プログラムの立案や推進体制の構築などを一緒に考えてきました。ビジネス書に書いてある一般論と違い、等身大のプログラムが立案できたと思います。技術系の業務に関しても、我々と同じ目線で業務を理解し、改善・改革のサポートを頂きました。09年4月から自主運営を始めましたが、少なくとも、活動の中心メンバーには改革の意識が根付いています。今までの経験に基づいた様々な視点からの指摘をふまえそれを反映し、さらにパワーアップしたチームが活動を推進していきます。

こちらで紹介した以外にも、ソフトウェアプロダクトラインの構築、人事業務の課題設定、地方銀行におけるBPR、SIerにおけるCMMI認証取得など、 様々なコンサルティング事例をご紹介可能です。皆様の課題解決に向けて、お気軽にお問い合わせください。

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