コンサルティング事例 case study

人材育成の新たな基盤構築 ~技術者の力を見える化し、戦略的に人を育てる~ 自動車メーカー様

背景・課題

自動車メーカーA社(以下A社)では、開発の効率化や技術の高度化のため組織を細分化・専門化した結果、狭い担当範囲を深く経験した技術者が増加傾向にあった。一方で、トップ技術者には製品全体を俯瞰できる能力も求められるため、将来的にトップ技術者がいなくなる可能性を危惧していた。

プロジェクトの目的・ゴール

「技術者の層の厚み」を見える化して、戦略的な育成の仕組みを構築する。仕組みを活用することで、下記2点のように人材育成の強化を実現する。

1.層の薄い組織や専門技術を把握して、人材育成を強化
2.トップ技術者の後継者を把握し、技術伝承を絶やさぬよう育成

施策と手順

実施事項(1)「技術者力」の構成要素を整理

技術者力をどのように測定していくべきか、そもそも技術者力とはどういうものなのかについて議論を重ねた結果、3つの構成要素からなる総合的な力として位置づけた。

①業務経験(開発を進めていくことで培われる経験)
②論理的思考力(知識を活用し、未経験の問題についても論理的に考え解決していく力)
③行動特性(経験を積むことで身についた、周囲の状況に上手く対応する行動指針)

実施事項(2)構成要素毎に、定量的な測定方法を決定

①業務経験
業務経験は、システムや部品・担うべき機能等、技術的な特性毎に身につく経験が異なる。例えば、メカ部品の開発を経験しても、制御開発の経験は身につかない。そのため、異なる技術特性毎にスキルマップを作成した。その際、部門が保有する業務経験の高低を俯瞰できるよう各業務経験を統一した段階で測定することとした。また、量産開発と先行開発で経験できる業務が異なるため、トップ技術者には量産開発と先行開発の両方を経験する必要があるよう定義した。

②論理的思考力、③行動特性
問題解決能力や対人能力、対自己能力等、ある程度細分化でき、かつ定量測定が可能なものさしを新たに設定した。項目毎に数段階のレベル設定をして測定する。

実施事項(3)技術者自身が、組織の応援のもと自己育成に取り組む運用を定義

技術者本人が異動も視野に入れた中長期的な業務経験プランを考え、どのように自己育成を行っていくのかを上長と議論しながら業務に取り組めるよう、従来の優れた仕組みを活用しながら運用を定義した。

実施事項(4)組織力と、組織の育成課題を見える化

組織力は個々人の技術者力を集約した結果といえるが、本事例の場合は3つの軸が存在する。そのため、3軸をx,y,z軸とした座標空間とするマンションのイメージで捉え、組織力は各部屋の人口密度で表現する"技術団地"構想を基本コンセプトとした。また、見える化された組織力を"誰が"、"どのように"使うのかユースケースを洗い出し、ユースケース毎に適切な表現方法を定義し、BIツール(データ分析・活用ツール)を用いてシステム化した。

実施事項(5)技術者個人の成長意志と組織力強化を両立する運用を定義

どのような組織においても言えることであるが、技術者の成長意志と組織力強化はしばしば背反する。例えば、メカ設計者が更なる成長のため制御開発部門へ異動を希望しても、メカ設計部門のおかれた状況により希望がかなわない事はよくある。そこで、次年度の人材配置検討のためマネージャーが集まる会議において、"トレード候補者リスト"を提示し、組織力を強化しつつ個々人の異動希望も考慮して議論する運用を定義した。トレードリストには、異動希望を申告した技術者の将来展望と、現時点での技術者力も記載されているため、人材トレードや期間を区切ったレンタル移籍?等を議論する補助ツールとして利用いただいている。

成果

構築した仕組みと運用を正式採用し、約1,000名の技術者が利用中。年数を重ねて行くことで、技術者個人や組織の成長、またその成長率を把握して人材育成の更なる加速も期待されている。

こちらで紹介した以外にも、ソフトウェアプロダクトラインの構築、人事業務の課題設定、地方銀行におけるBPR、SIerにおけるCMMI認証取得など、 様々なコンサルティング事例をご紹介可能です。皆様の課題解決に向けて、お気軽にお問い合わせください。

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