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伝わるコミュニケーションとは?

 近年、多くの製品に多機能、高機能が求められるようになり、それに伴い製品開発プロジェクトの大規模化、複雑化が進んできています。そのような中で、個人の仕事も、一人で成し遂げられる仕事に比べ、多くの関係者を巻き込みながら達成していく仕事の割合が増えてきたのではないでしょうか。
 多くの関係者を巻き込みながら達成していく仕事では、自分の意見、見解に基づき、周りの人に行動を促していく場面が多く必要とされます。そうした中では、自分の言いたいことを分かりやすく表現し、相手に納得して行動してもらえるための「伝わるコミュニケーション」が重要になってきます。
 それでは、「伝わるコミュニケーション」のために、私たちはどのようなことに配慮していく必要があるのでしょうか?

 「伝わるコミュニケーション」には、大きく"論理"、"感情"、"タイミング"の3つの要素があり、これらが相互に作用して、相手の納得感、行動促進につながっていくと考えます。
 まず、"論理"についてですが、これは自分の伝えたい内容が簡潔にまとまっており、誰もが、同じ意味で、「前提と結論」、「主張と根拠」、「原因と結果」の関係性を捉えることができる、ということが重要です。論理的な表現方法の詳細な説明は専門書に任せますが、"論理"は「伝わるコミュニケーション」の基本、共通言語であるといえます。

 次に、"感情"です。皆さんにも経験があると思いますが、論理的な正しさだけでは、相手が思うように動いてくれないというケースは多々あります。仮に論理的に相手を説得できたとしても、感情的に受け入れられない場合は、その後の作業効率、成果に大きな影響がでてくることでしょう。重要なのは、相手に気持ち良く意思決定、行動してもらうために、論理一辺倒ではなく、口調、表情、文章表現、または、伝える順序といった相手の感情的な面にも配慮し、「よしやろう、やりたい」という気持ち(欲求)を持ってもらえるかどうかです。
 米国の心理学者・アブラハム・マズローは、人間の欲求には以下5つの階層が有り、低階層の欲求から高階層の欲求へと段階的に移行していくと述べています。

 1.生理的欲求(生命維持のための食欲・性欲・睡眠欲等の本能的・根源的な欲求)
 2.安全の欲求(衣類・住居など、安定・安全な状態を得ようとする欲求)
 3.親和・所属愛の欲求(他人と関わりたい、他者と同じようにしたいなどの集団帰属の欲求)
 4.自我・自尊の欲求(自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める認知欲求)
 5.自己実現の欲求(自分の能力・可能性を発揮し、創作的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求)

 相手の、「よしやろう、やりたい」という気持ち(欲求)を喚起するには、相手が5つの階層のどこにいて、どの様な欲求を満たしたいと思っているかの仮説を持ち、その欲求をくすぐる伝え方を心がける必要があります。例えば、第4階層にいる相手には、「君しかできない、君の力が必要だ」という思いを伝えることが大切ですし、第5階層にいる相手には、「きっと君の成長につながると思う」という思いを伝えられればよいでしょう。

 そして、最後に"タイミング"です。"論理"面、"感情"面で十分な配慮ができていたとしても、それを伝える"タイミング"に問題があり、台無しになってしまうというケースがあります。相手の納得を得るために最も効果的なタイミングはいつなのかを見計らうことが重要です。最も効果的なタイミングは時と場合によるので、「ここです!」というのはなかなか難しいのですが、それがいつ来てもいいように、事前に論理面、感情面に配慮した伝え方を準備しておき、相手の状況(機嫌、仕事の忙しさ等)をよく観察したうえで、「今がベストのタイミングか?」と何度も自問してみるといいでしょう。

 思うことはすぐに言いたい、伝えたいという衝動に駆られてしまい、一番効果的な"ドンピシャリのタイミング"を逸してしまうということが無いように、ベストなタイミングをギリギリまで待つことのできる、忍耐力を持つことも大切です。

 皆さんも、自分のコミュニケーションが「論理、感情、タイミング」の3つの視点から「伝わるコミュニケーション」になっているか、再度ご確認されてみてはいかがでしょうか?

執筆:松田 有記
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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