多事想論articles

日本の市場を改めて考えてみる

 最近、様々な紙面やマスメディアでは、日本市場が縮小に向かっていると報じられています。その原因は商品やサービスが飽和状態に加え、日本の人口が減少に転じていることだとしています。モノ・コトづくりを支援するコンサルタントとして、市場縮小傾向の打開策はないものか、歴史を紐解き考えてみたいと思います。

日本の人口が減少した時期が何度か存在しています。最も大きな変化があった時期は、江戸時代中期1730年ごろから1800年ごろです。
この時代は気象の悪化を原因とした飢饉が相次ぎ、人口もそれを契機に減少しました。

人口減少は、人口生態学的には、人間の環境許容量(国家や地球が養える人間の規模)が飽和して、人口抑制装置※1が作動するために起こるとされています。

江戸時代中期は、農業が文明を支えていましたが、養える人口規模を超えてしまうことで、社会的な閉塞感が起こり、少子化が進んでいったとされています。まさに人口抑制装置が作動した状態です。この危機的状況を救ったのは、西欧的知識を生かし、手工業を急速に発展させた薩摩、長州藩でした。現代につながる工業文明を発展させました。このことをきっかけに、市場が活性化し、人口も爆発的に増加しました。

現代の日本に話を戻すと、人口減少すなわち、人口抑制装置が作動した状態です。これまで日本を支えてきた工業文明では人間の環境許容量が飽和している状態になっています。まさに生活様式が変わるような「新たな価値」を創出する時にきています。

そのためには現状の延長線上ではない発想を生むプロセスを持つこと、そしてそのプロセスに従い、商品やサービスの開発者自身が自ら考えることが必要だと私は思います。

世の中の人は見たもの、経験したものしか欲求を示すことができません。全く新しい価値を生むためには、従来型のプロセスである世の中のニーズに耳を傾けているだけでは創出することができません。例え創出できたとしても現状の改良に留まってしまいます。

「新たな価値」を生むためには、「こんな未来なら誰もが幸せになるに違いない」そのような視点で未来を創造しながら、人の本質的な欲求を考えるプロセスが必要で、それを商品やサービスの開発に携わる人たち自身の頭で考えることが最も優れた手法だと思っています。

繰り返しにはなりますが、人口抑制状態において、これまでの人口拡大前提での成功体験は役に立ちません。過去の成功体験、安定したプロセスから抜け出し、現在の延長線上にない価値を創出してみませんか?

※1 人口抑制装置:人間は人口と生活資料の均衡が破れると、人口増加を抑えるため"能動的抑制"と"予防的抑制"を始めること。

※2 ITIDでは、独自手法を基に新たな価値を創出するご支援をしています。下記課題解決メニュー「新規事業の創出」も併せてご覧ください。

執筆:村山 誠哉
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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