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矛盾の中での決断

 近年、また人工知能関連のニュースを目にすることが増えてきました。これまで何度か流行っては廃れてきた技術ではありますが、ここ数年の機械学習におけるブレイクスルーにより、実用化に向けて一気に花開きました。普段使っているサービスの中でも、Googleの検索タグ付け、Appleの音声認識、SmartNewsの記事収集などで利用されています。組み立て用の産業ロボットのように既に機械化が進んでいる分野でも、これまではロボットに動きを教えるために熟練工の手が必要でしたが、ロボット自身の自己学習により不要になりつつあります。

 人工知能の技術が進むといつも考えさせられることは「人間が発揮する価値はなにか」ということです。

 知識の蓄積ではもちろんコンピューター、ネットワークには及びません。その応用力においても、自己学習により人間を超えてくる可能性が高いでしょう。コンピューターにできないことで、人間にできることは一体何でしょうか?

 私は「矛盾する情報の中で物事を決めること」がその一つではないかと思います。

 私達は仕事においても、生活においても、生きる上で様々な決断に迫られます。そして決断する際、可能であれば情報を集めるでしょう。全く情報のない中で決めることは目をつぶって歩くようなものであり、思わぬ落とし穴に嵌ってしまうかもしれません。前に進めるために情報を集めることは必要なことです。

 しかし情報を集めれば必ず選択すべきものがはっきり決まるかというと、ほとんどの場合一意には決まりません。ある情報によるとAの方が良さそうだけど、他の情報を見るとBにすべきに思えるといったことはよく起こります。また、さらに情報を集めると、当初考えていなかった選択肢Cというものが出てくることもあります。

 なぜ情報を集めただけでは決められないのでしょうか。それはこれらの情報があくまで外部要因でしかないからです。難しい決断をするときには、その人の軸となる考え方、価値観が大きく作用します。就職先や結婚のパートナー選びなどを思い浮かべてみると想像しやすいと思います。

 決断するということは、同時に何かを捨てることであり、苦しさを伴うこともあります。だからといって決断を避けてばかりいると、外部要因によってのみ生かされることとなってしまいます。矛盾する情報の中で何を決断するのかということは、その人が何を重視するのかというのを表明することと同義ではないでしょうか。

 何かを捨てて決断することによって、自分の意志を示す。

 それを続けることにより、自分の中で軸が形成されていき、次の難しい選択に対しても対処する力がついていきます。勇気を持って決断し、人としての価値を高めることが、今後ますます重要になってくると思います。

執筆:大屋 雄
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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