多事想論articles

技術者に営業マインドが必要か

 「顧客に売りに行ってこい、と技術者に声を掛けても誰も行きたがらない。技術者に営業マインドを身に付けさせるにはどうすればよいか?」という問い合わせを弊社の部品メーカーなどの顧客より受けることがあります。皆様の商品開発現場でも、似たような問題意識を持ったことはありませんか?


 果たして技術者は営業マインドを持つ必要があるのでしょうか?
そもそも営業マインドとは一体何でしょうか?

 私が過去ある管理職の方とお話した際、その方は、営業マインドとは「顧客を訪問し、自社の商品を売り込み、契約を取ってくることだ」と言われました。「それって本来は営業がやるべきことではないでしょうか?」と投げかけた所、「営業は頼りにならなくてね」という返答に、技術者と営業の間の深い溝を感じたことがあります。


 私が考える技術者に求められる営業マインドとは、足を運ぶことを厭わず、顧客の生の声に耳を傾ける心構えです。また、技術者の役割とは、営業マインドを持ちながら、顧客が期待する商品を具現化し、付加価値を付けて提供することだと思います。

 営業が『顧客の声に耳を傾ける』ことがしっかりできていて、かつ営業と技術者が連携できていれば、技術者は外回りなどせず、営業を通じて顧客の声を聴けば十分なのかもしれません。しかし、現実はそんなに甘くはありません。営業も顧客の声を十分に受け止めきれないこともあります。自分に都合のいいことしか技術者に伝えないことも往々にしてあります。技術者が顧客を訪問し生の声を聞くと「営業から聞いた話と違うじゃないか」というシーンに遭遇することもしばしばです。

 広い技術的視野を持って顧客と接する。これは営業だけでは難しいことなので、技術者が顧客の生の声を聞くことがとても重要になっているのだと思います。


 先日放送されたテレビ東京の番組『カンブリア宮殿』で、顧客が欲しい商品を次々と生み出していく花王株式会社の強さの秘密を明らかにしていました。その中で感銘を受けたのは、研究畑を歩んできた澤田道隆社長の口癖でもある『本質研究』に注力する基礎研究所の働きぶりです。科学の目で物事の本質を追求すると共に、顧客ニーズの本質をも追求、長年培った技術を製品開発に活かす姿勢が徹底しているのです。それに加え、研究部門、開発、営業、販売、製造といった関連部署全てが見事に連携し、密に意思疎通を図りつつ、一丸となって顧客の心をつかむ商品の開発に取り組んでいる姿も印象的でした。この組織連携は、長年の経営で伝承されてきたものであり、一朝一夕に培われるものではないですが、お互いにリスペクトし切磋琢磨し合う関係が完成しているのです。


 技術者と営業は商品開発の両輪であり、技術者と営業がそれぞれの責任、役割を認識した上でしっかり連携し、顧客の生の声を受け止めることができなければ良い商品は開発できません。また、技術的にどんなに優れた商品を開発できていたとしても、その商品の価値を顧客にしっかり伝えることができなければ、売上を伸ばすことは難しいでしょう。

 あなたの組織では、それぞれの部署が果たすべき責任や役割、お互いにリスペクトし切磋琢磨し合う関係、互いの足りないところを補完し合う関係が構築できていますか?

執筆:桑野 茂
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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