多事想論articles

花火に想うこと

そろそろ梅雨が明けて本格的な夏が来る。夏の風物詩といえば皆さんは何を思い浮かべるであろうか?

私にとっては花火である。
読者の中で花火を楽しむ方は多いであろう。もちろん私もその一人である。
夜空に壮大に舞い上がる様は、その美しさによって多くの心を魅了する。
と同時に、私の遠い記憶をよみがえらせるものでもある。

私が米国に留学していた学生時代のこと。大学の近くにリトルイタリーがあり、毎年祭りが開催されていた。ある年友人たちとその祭りに参加した際、花火が打ち上げられており、私はうっとり見入っていた。
ふと隣を見ると、友人の一人がうつむいている。声をかけると「花火は好きじゃない。故郷を思い出してしまう」と。聞けば彼はレバノン出身で、幼少時代に経験した内戦により花火が爆撃を思い出させるという。

日本で育ち平和ボケしていた私は彼の言葉に驚いた。と同時に、同じ事象に対して捉え方が千差万別であるという事実が深く心に刻み込まれた。

コンサルタント業務は多岐にわたるが、支援活動においてクライアントの機微に目を向けることはとても重要である。常に当事者、そしてその上役の視座に立ち、支援終了時には関係者の方々が働きやすい業務環境を築けている姿を思い描きつつ、彼らと腹を割った対話を大切にしながら活動を推進する。そんな教訓を花火の出来事で学んだ気がしている。

「お互いに思い込みや隠れた前提はないか」
「発言内容だけに捉われるのではなく、その文脈や背景にも気を配られているか」
「クライアント同士でも本当に共通認識ができているのか」

今年も心を引き締める季節がきた。

シニアマネージャー 西村 崇

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