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プロセス製造業とディスクリート製造業

製造業の技術者からコンサルタントに職を変えてから初めて聞いた言葉は数多とありますが、その一つ(二つ)にプロセス製造業とディスクリート製造業という製造業を大きく二つに分類する言葉があります。

私は前職では、ざっくり表現するとプラスチック製品の設計者をしていたのですが、それはどうやらプロセス製造業出身者とやらに分類されるらしい、そして、どうやらITIDではそのプロセス製造業出身者はマイノリティらしい、と初めて聞く言葉で分類されて、入社当時に内心混乱していたことが思い出されます。

・プロセスProcess[](化学的に)処理加工した 例)process cheeseprocess food
・ディスクリート Discrete[]:〔完全に〕別々の、個別の、不連続の、はっきり区別されている

英単語の意味に補完して表現すると、

・プロセス製造業:化学的な処理加工で混合材料を反応させながら製品化する製造業
・ディスクリート製造業:物理的な処理加工で個別の固体材料を組み合わせながら製品化する製造業

といった感じの定義になるのでしょうか。

インターネットで簡単に検索してみて、両製造業の特徴を抜粋してみました。

<プロセス製造業>

・主に化学薬品や石油などの流体を原材料とする製造業。代表的なものとして、化学プラントや製油工場が挙げられる。
・原材料を混合し、化学反応を起こして製品を生産する。
・各原材料に消費の有効期限が存在する。(これは製品による。無機物を使う製品もあり。)
・製造工程を分割して生産することができない。(これも製品による。中間体として在庫できる製品もあり。)

<ディスクリート製造業>

・主に固体を原材料とする製造業。代表的なものとして、自動車工場や電子部品工場などが挙げられる。
・単体(個体)の部品を組み合わせて製品を生産する。
・基本的に原材料や部品には消費の有効期限が存在しない。
・製造途中の仕掛け品を在庫としていったん管理する。

追加して私見を述べると、この2つは製造プロセスが製品の品質に寄与する影響度が大きく異なると思います。
もちろんディスクリート製造業もその組み付け方などで品質が決まる部分はあるとは思いますが、プロセス製造業は原材料の混合、化学反応、成型、など各製造プロセスの結果がそのまま製品の品質に直結します。
「機能性材料がうまく分散しなくて想定していた性能が出ない」
「成型時の温度条件(加熱状態からの冷却速度)により製品強度が大きくばらつく」
などが(私が実際に経験した)具体例です。
そのため、設計者は原材料の組み合わせ設計はもちろんですが、製造プロセス(製造方法・条件)の設計に非常に苦心します。

さらに、その製造プロセスの設計を難しくさせる要因として、プロセス製造業では製造プロセスにブラックボックスが多いという特徴があります。一般的に大規模装置を使用して高い温度や圧力をかけて流体加工や化学反応を実施するので、その過程を目視で確認できない製造プロセス、装置が多いのです。
そんな制約もあって、実験室レベルで原材料の組み合わせ設計を完了して、いざ実生産ラインで流してみると全然想定通りにいかない・・・そのような経験は枚挙に暇がありません。

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さて、これまでプロセス製造業とディスクリート製造業、それぞれの製造業の違いについて長々と述べてきましたが、いま私がプロセス製造業出身という立場でディスクリート製造業のお客様のご支援活動をしている中で感じていること、本コラムでお伝えしたかったことは、現場の技術者が困っている問題、課題は本質的には変わらないということです。
「過去の知見が蓄積されていない」
「活かせていない」
「同じ失敗を繰り返す」
「他部門との横連携ができていない」
「担当者の意欲が低下している」
「市場の要求を捉え切れていない」
・・などなど、お客様と会話していて聞こえてくるのは私が前職でも感じていた困りごとばかりです。

ITIDにはこれまでディスクリート製造業のお客様に対してご支援してきた長い実績とノウハウがあります。
そして、そのノウハウを活用しながら、プロセス製造業出身の立場でディスクリート製造業のお客様のご支援活動をしている私のようなコンサルタントが(マイノリティですが)ITIDには在籍しています。
我々はこの経験を活かして、ご支援対象をプロセス製造業にも拡大していきたいと思っています。

プロセス製造業の技術者の方で、少しでも本コラムを読んでご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら是非お声がけいただき、プロセス製造業あるあるを一緒に語り合うところから始めませんか。

マネージャー 山内 智史

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