多事想論articles

顧客目線

つい先日のことですが、数年にわたる賃貸生活に終止符を打つためにマイホームを購入しました。

人生の中でも特に大きな買い物になるため、購入に当たって様々なハウスメーカーを見て回り、慎重に選びました。

各メーカーそれぞれに特徴があり、デザインが良いものや断熱性能がいいもの、コストが安いものなどがあり、ハウスメーカーの決定に非常に悩みました。

最終的にハウスメーカーを決めた要因となったのは、ハウスメーカーの特徴に加え、営業担当者の信頼感でした。

とあるメーカーの営業担当者は「弊社の特徴は選べるインテリアの豊富さです。設計士以外にインテリアコーディネーターも家づくりに参加するので、満足のいく家を建てられると思います。」と一方的な説明をするのみで、こちらの悩みや要望にあまり耳を傾けてくれませんでした。

一方、私が選んだメーカーの営業担当者は、自社の特徴をアピールする前に「今の家にどんな不満や悩みがありますか?」と私の困りごとを聞いてくれ、私は「夏は熱く、冬は寒いことが不満です」と伝えました。この悩みを聞いた営業担当者は初めて自社の特徴である断熱性能や空調システムの説明をしてくれ、1年中気温差が少なく快適に暮らせることをアピールしてくれました。

他にも電気代や修繕積立費などランニングコストが不安だと伝えれば、そのハウスメーカーで家を建てた人の実例を教えていただき、私の不安や悩みに対応してくれました。

ハウスメーカーの選択で経験した「顧客が抱える課題を聞く姿勢」は我々コンサルタントにも通じるものがあると感じました。

他の顧客課題を理解しているコンサルタントはやってしまいがちですが、私が選択しなかったハウスメーカーの営業担当者と同じように、そのコンサルティングサービスを提供する企業が得意とする領域やソリューションを顧客へ一方的に提案するだけでは顧客から信頼感をもっていただけません。

顧客からするとわかってもらったという感覚が少なく、信頼にはつながりにくいのです。顧客の困りごとやありたい姿から課題を吸い上げ、顧客の言語で会話をし、解決したい粒度感に適した提案をすることで信頼感をもって頂けると思います。

案件の例として「進捗管理支援」での経験をお話しさせていただきます。

顧客の現状として、進捗管理のためメンバーに計画や実績の記載を指示しているが、それらの指示を実行しないメンバーが多く、進捗管理が定着しないという状況でした。

顧客は我々にコンサルティングを依頼する際や、案件遂行中に「自分たちにできなかったことを、外部の人間であるコンサルタントができるのか?」「ツールの導入やあるべき姿を描くだけで、絵に描いた餅となるだけではないか?」といった不安や悩みを持っていたと思います。

そこで私は、コンサルティング活動の関係者会議で課題抽出や解決策の提案を行うのではなく、顧客目線に立ち、現場へ足を運び、管理職や担当者それぞれの意見も取り入れた上で解決策の提案を行いました。

現場の意見を聞いてみると「プロジェクトの進捗状況を記載すると、重箱の隅を突かれるような指摘を受けるだけで良いことがない」といった問題があることがわかりました。この場合、進捗管理による現場への嬉しさの提示。という隠れた課題が抽出され、この課題を重要視した提案をしないと現場はやりたいとまでは思えないのです。

このようにコンサルティング活動の関係者だけで課題を抽出するのではなく、現場も含めた顧客視点で課題を抽出し、それを解決する提案を行うことで信頼感を醸成するようにしています。

我々コンサルタントは表面に見える業務課題だけでなく、本質的な課題の解決が求められます。そのためには顧客と同じ目線で物事を考え、隠れた課題を拾い上げる姿勢も必要だと日々の活動で感じています。私が選んだハウスメーカーの営業担当者と同じように、顧客目線で物事を考えられるコンサルティング活動を推進していきたいものです。

シニアコンサルタント 田沼 禎将

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