多事想論articles

幸せな組織

 「幸せのメカニズム:前野隆司著 講談社現代新書」に、自分が幸せだと感じる4因子が調査分析結果として導かれています。そのひとつに、「つながりと感謝」という因子があります。一人では成しえないことをチームとしてつながるということで成し遂げられるということは、只今真最中のワールドカップを見ていても実感できます。近年はSNSの普及によりネット上でつながることも当たり前という時代になってきた感もある中、幸せを実感するのに必要不可欠である組織を対象としたとき、何でもつながっていればいいのだろうか、幸せなつながり方というものがあるのではないかを考えるに至りました。

 つながる数が多い、規模が大きいということは、影響が及ぶ相手が増えるということでもあります。人の例ではないのですが、最近相互乗り入れが進む首都圏の鉄道では、埼玉での事故で、横浜周辺の電車もストップしたりします。乗り入れで便利になった反面、今まで対岸の火事の関係でしかなかったトラブルに影響を受けるという例です。システムや製品でも、不具合現象が生じたときに単純なつながりであればある箇所を交換すれば簡単に修復できますがつながりが複雑になると、不具合原因の特定も難しくなりますし、不具合箇所だけの単純交換では済まされず、関係している、サブシステム、部品との相性確認、調整が必要になります。高度な便利さ、パフォーマンスを出せることは、幸せといえることですが、その副作用としての悪影響にも目を向けねばなりません。

 この様に考えると強固で数多くつながりながら、副作用としての悪影響が小さくなるようなつながり方が、一番幸せということにも取れるのですが、調子いいときだけつながっていて、またはつながっているようなふりをし、困ったとき、都合が悪くなったときには知らん振りといういわゆる「表面的な仲良しクラブ」のようなつながりは、決して幸せといえないでしょう。先日の東京都議会で、複数人が暴言を吐いたにもかかわらず、周りの誰も正さないというような事象も典型的な例です。私は、組織は調子のいいときは、がちがちではないゆるい連携で多様な動きが出来なければいけないと考えます。一方で、いざ困ったときや調子が悪いときには、その原因はなるべく隠れないようにしておく仕組みが必要です。ここがITシステム、都議会などと違うところです。そして誰も逃げ出さすに本気で議論できなければならないでしょう。

 直接的なつながりのみならず、時にはモノ、時にはコトを通じながら関係性を持って成り立っている複雑な組織。幸せな組織とは、順調なときには、柔軟に多様なゆるめのつながりをもち、危機に遭遇したときには、損得ではない判断で行動を共に出来るつながりをもった仲間がいるこというのがたどり着いた結論です。そしてもちろん感謝も忘れてはなりませんね。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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