多事想論articles

協力する文化

 先日、地元の町内会の夏祭りに参加しました。今年は近年まれに見る猛暑に見舞われたこともあり、私が作成を担当したカキ氷は飛ぶように売れました。 この夏祭りは、町内会の役員、子ども会が中心となって毎年行われているものです。あまり大規模ではないものの、住民の皆さんもこの時ばかりは非常に盛り上がっていました。 夏祭りの運営チームは、普段はほとんど顔を合わせない方も大勢いるにもかかわらず、役割を分担し、一致協力してイベントを立派に成し遂げていました。

 いつのころからか日本には、自分だけ良ければよいという個人主義が横行しています。周囲とのふれあいの場は確かに減っています。 すべて個人単位(一家族)が良ければよいという考えでは、夏祭りの遂行はありえないのは火を見るよりも明らかです。 だからといって、逆に夏祭りを強制参加のような形にして、役員からの指示で実施するといわれても、今の多様化の時代にうまく回らないのは目に見えていますし、少なくとも楽しくはないでしょう。 普段はあまり一体感が見えなかったとしても、有事、祭事には個々が有機的に集まり、ひとつの集合体として十分に機能することがやはり必要です。 その大切さを町内会の夏祭りという非常に身近な出来事を通して感じることができたわけです。

 歴史を遡ってみると、日本人は戦国時代でも各藩が協力しあって戦をしていました。また、町民も路地に面して建てられた長屋住まいで近所との関わりを基礎としてきましたし、長屋は城郭内にもありました。 "隣組"や"向う三軒両隣"などという言葉に代表されるように、それぞれが"個"としても存在しながら、助け合うべき時やイベントなどでは団結する文化があったと考えることができます。 ところが、いつの間にか日本人の多くは、個人も組織も国もうまい協力ということを苦手としてきてしまったようです。 苦手になってしまった理由はいろいろありますが、国が豊かになり、周囲の助けを借りなくてもそこそこやっていける意識を持ってしまったということは大きく影響していると思います。

 昨今、オープンイノベーションという企業間や産学官間で強みを活かしあった協力を促進する動きが出てきています。日本が国際社会で生き延びていくためにこの活動は欠かせません。まずはそういった機会、場が創出され、企業同士では、一方的な買収以外での相乗効果が期待できる前向きな形での連携が数多く生まれて欲しいと考えます。先に述べたように元々連携のうまい民族なのですから、難しいことではないはずです。 冒頭で記した夏祭りでは、1cm程の厚さになりもう削れなくなったカキ氷用の氷をビールの冷蔵用に使い、全く無駄無く氷を活用できました。 これをオープンイノベーションというのはおこがましい話ですが、このような"協力によって創られるいい事"は、あなたの周りにもたくさん埋もれていたり、転がっていたりしていることでしょう。 少し周りを広くみたり、一歩先を見ようとしたりすることで、小さくてもいい、決して一人では起こせないイノベーションを旧知の仲間と、もしくはまだ知らぬ仲間と一緒に起こし、明るい明日を作っていこうではありませんか。

執筆:北山 厚
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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