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価値あるものづくり

 皆さんご存知のユニクロ。薄い素材にもかかわらず暖かいインナーや家庭用洗濯機で手軽に洗えるセーターなどがヒットし、暗い話題が多いこの時期にもかかわらず企業収益は好調のようです。

 そんなユニクロも一時は量販店の価格対抗により、一番の魅力だった価格優位性が薄れ、目先を変えた野菜事業にも失敗するなど今後の成長に暗雲が漂った時期もありました。そうした反省から、安いだけの大量生産を止め、消費者が求める付加価値と価格の二つを追求した商品を開発したことが、今のヒットにつながっています。まさに、安価大量生産から価値あるものづくりへの転換に成功した例と言えるでしょう。

 では、企業が価値あるものづくりに取組むとはいったいどういったことでしょうか。確かに、ヒット商品の中には、ちょっとしたアイディアが大きな成果をもたらしたという例もあります。しかし、残念ながらそういったアイディアを一つの企業が継続的に出し続けることは限りなく不可能に近く、価値あるものづくりとはそのようなラッキーパンチを狙い続けることではないはずです。

 ユニクロは、「服のシルエットを崩さない位薄く、しかも暖かいインナー」、「家庭で手軽に洗えて、しかも縮まないセーター」といった相反するニーズに素材メーカーと共同で挑戦し、バリエーション豊富な商品を安価に市場提供することに見事成功しました。新たな商品価値を創り出したインナーやセーターに対して、私たち消費者は喜んでお金を支払っているわけです。この例を見ると、背反の解決に継続的に取組む活動は、価値あるものづくりの大きな部分を占めていると言えるのでしょう。

市場のルールは既に大量生産の価格競争から価値あるものづくりに変りました。幸いなことに、モノに対する消費者の強いこだわりと出来ないを可能にする技術、その両方を日本は持っています。いままでの常識を一度ゼロスクラッチし、消費者のニーズや自社の技術、ナレッジを棚卸ししてみてはいかがでしょう。一昔前までは背反としか考えられなかったテーマに思わぬ活路が開け、新たな価値を創り出せるかもしれません。

 そして私たちITIDも製造業の皆様のニーズにお応えすべく「手軽でしかも即効性がある」価値あるソリューションづくりに挑戦しています。先月、ITIDのコンサルティングノウハウをシステム化し、iPRIME Naviバージョン1(当時;現iQUAVIS)としてリリースいたしました。まだ道半ばではありますが、「技術の見える化が手軽にでき、しかも最適な検討順序を示唆する」ことが今までにない商品価値です。

執筆:妹尾 真
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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