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イノベーションを促進するスキル管理とは

少し前になりますが、ロイター社から「世界で最も革新的な企業100社」が発表されました。
日本企業は28社が受賞しています。2012年からは3社増えており、日本企業が弛まぬ努力をしていることが垣間見えます。 またこの調査で受賞している企業を見ると、S&P500と比較して株価の年間上昇率を4%、時価総額加重平均売上高を2.2%上回っているそうです。 100企業/機関の収益の合計はイギリスのGDPのほぼ2倍に相当する4.5兆ドル、また昨年一年を通じて26万人超の新規雇用を創出しており、事業としても良い結果が得られているとでています。 研究開発への投資額は2,230億ドルで、S&P500の研究開発費を8.8%上回る結果が得られており、十分な研究開発費を投じることで、一定の成果が得られていることがわかります。

このような企業になるためには、どうしたら良いでしょうか。

1つは先に挙がっていたとおり、十分な研究開発費を投じることです。やはり元手がないとどうにもならないのは、データが物語っているかと思います。

ただ十分な研究開発費を投じたとしても、イノベーションを起こすには革新的なアイデアの発想が重要です。そのアイデアの発想を行なうには「人材」が必要です。
企業としては外部に頼る方法もありますが、まずは社内でイノベーションを起こせる人材を探したいのではないでしょうか。しかしそれはなかなか一筋縄ではいきません。終身雇用が崩壊し、人材の流動化も増加傾向です。会社の分社化や合併なども増え、自社内でイノベーションを起こすための人材を探すのも一苦労です。

そこで私達が提示しているのは、「イノベーションを促進するためのスキル管理方法」です。この手法は、イノベーションを起こすための土台を作るためのものです。

3Mでよく聞く「20%ルール」など、組織でイノベーションを起こせるような仕組みを実践しきれている企業は少なく、古くは本田宗一郎や、近年でいえばスティーブ・ジョブスなど、いわゆる天才と言われる人に結果的に頼っている企業が多く見受けられます。 このような天才の登場を待ちイノベーションが結果的に起きたのではなく、戦略的にイノベーションを促進する手法です。
またスキル管理というと、すでに多くの企業が取り組まれているかと思いますが、ここでいうスキル管理は、今後必要となるスキルが何かを明らかにすることです。

世の中には「スキル管理」の手法は多くあります。しかしながら、多くは現状保有しているスキルを管理していることが多く、例として挙げれば、英検○級から始まり、○○力学、○○加工技術などが挙がります。 ただ、これらのスキルは多くの人が取得済みであることが殆どで、スキルの陳腐化が始まっているものを管理している状態です。現状のスキル管理をすることも重要ではありますが、ここから新たな事業やキャッシュを生み出すことに活用することは難しいかと思います。

ここで考えることが必要なのは、今後必要となるスキルが何かです。
これがわかってくると、自社にどのような人材が足りないのか、どのような育成をしていけばいいのかを考えられるようになります。

さて今後必要となるスキルが何かをどう導くかですが、まず自社がどの製品・技術(コア技術)で利益を上げるかを考えることが必要です。 そして、その後でその製品・技術を開発するために必要なスキルが何かを明らかにしていきます。

「イノベーション」、「コア技術」

図1

図1は自社がどの製品・技術で利益を上げるかを考える仕組みの例です。
どの技術がどの市場にHitしそうかを検討し、市場魅力度(成長性、規模など)と自社技術の関係性を明らかにすることで、どの技術を醸成すべきかを明らかにします。これにより、自社の今後必要となりえる技術(コア技術)を決めます。


「イノベーション」、「コア技術」
図2


次に図2にありますが、技術(コア技術)を醸成させていくには、どのような人材が必要か、その人材が所持すべきスキル、役割・レベルを定義していきます。 最後に人材ポートフォリオを検討し、今後必要となる技術(コア技術)に対して、現状の人材でカバーしきれているのか、いないのかが判別でき、カバーしきれていない部分は育成するか、外部から採用するかなどを検討します。
この手法を継続的に行なうことで、一人の天才に頼るのではなく、組織としてイノベーションを起こす土台を構築でき、イノベーションの発生確率を高めることが出来ます。
また、イノベーションを起こすための要素は、シュンペーター、ドラッカーやクリステンセンが分かりやすく残しており、弊社もそれらも参考にしながら、各社にあったイノベーションをドライブさせるやり方をコンサルティングしています。いくつか挙げると、新たな価値を創造することや新規事業の創出 などです。こちらもご参照いただければ幸いです。

執筆:福嶋 徹晃
※コラムは執筆者の個人的見解であり、ITIDの公式見解を示すものではありません。

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