多事想論articles

「作業」を「仕事」に変える"任せ方"

「多くの人が、仕事でなく作業ばかりやっている!!それで面白いか!?」

 私が設計プロセス改革活動のご支援をしている自動車メーカーの管理職の方の発言です。私も、最短時間でチームメンバーからアウトプットが出てくるように細かいやり方を中心に依頼してしまう傾向があったので、すごく印象に残りました。組織における個人の役割は、モノ・コトの複雑化に伴い細分化が進んできました。その結果、個人の役割から見た組織の目的が遠くなり、細かくルーチン化されたことを何も考えずに手を動かすだけの機会(=悪い意味での作業)が増えてしまっているというのが現実なのでしょう。でも、本来仕事は作業なんかではなく、やり甲斐を持って、能動的にやれるものであるはずです。そんな想いから、冒頭の発言に共感される方も多いのではないでしょうか。

 一見作業的なことであっても、本質的には考えてもらいたいことや工夫してほしいことがたくさんあるはずです。しかし、実際に仕事を任されたメンバーが単なる作業と受け止めてしまうと、メンバー自身の「考える枠が狭くなり」「考える機会が減り」「やらされ感が増える」という悪循環が生じてしまいます。では、この悪循環を断ち切るために、仕事を任せる側は、何を心掛けたら良いでしょうか。

仕事の"任せ方"
心掛け1)仕事の目的や他の仕事との繋がりを齟齬無く伝える
 任せたいアウトプットややり方だけを伝えるのではなく、「目的は何なのか?」「目的達成のために、チーム全体でどのようなアウトプットを出したいのか?」「そのために誰が動いているのか?」といった仕事の構造を明確に伝えることが重要です。メンバーの理解を確認しながら齟齬なく伝えるために、意識して直接会話する時間を作るようにしましょう。

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心掛け2)メンバーの能力を知り、やり方は任せる
 そして、メンバーを信じて任せることです。そのためにはメンバーとのコミュニケーションを増やして能力を知っておく必要があります。もちろん、育成面を考えてメンバーの能力を超えた仕事を任せることもあるでしょう。その際には、段階的にフォローアップできるレビュー計画を設ける、目的を満足するアウトプットが出なかった時の対応方法を考えておく、リカバリーができるように時間の猶予のある仕事を任せる、等の工夫を行いましょう。

上手な"任せ方"ができた時の効果
 前述の心掛けが実践に結びついてくると、仕事を任されたメンバーは、何も考えずに手を動かすのではなく、以下の効果が期待できます。
効果1)枠を広げて考える機会が増え、考える力が鍛えられる
 自分で考える内容がこれまでの枠内だけでなく、特に行き詰まった時には、目的に立ち返ってアウトプットとやり方を考えることになります。その結果、考える機会が必然的に増え、考える力の鍛錬に繋がります。
効果2)他の仕事との繋がりがわかり、能動的に行動するようになる
 自分の仕事と他のメンバーの仕事の繋がりを理解できるようになり、関係者とのすり合わせを能動的に行えるようになります。
効果3)成果を実感しやすくなり、やり甲斐が芽生える
 「自分の仕事が、最終的にどのような目的に繋がっているのか、繋がったのか」を実感しやすくなります。その結果、目の前の仕事に対してやり甲斐を感じられるようになります。

 ここで、前述の心掛けを上手に実践できた「車のシステム開発リーダー」の事例を紹介します。まずは、システム開発リーダー自らが、役員と握った車両目標に対する開発システムやユニットへの要求を段階的に構造化しました。その上で、ユニット担当者の自領域だけでなく上位の車両目標&システムへの要求や他のユニットへの要求の構造を、ユニット担当者に伝える場を持ちました。

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 また、ユニット担当者全員が定期的に集まり課題を議論する場を設定しました。その結果、これまで自領域の枠にはまって開発を進めていたユニット担当者達に自発心や仕事に対するオーナーシップが芽生え、能動的にすり合わせ(要求の割り付け)をしながら仕事に取り組むようになったそうです。「自分の仕事が車(商品)としてどんな商品価値に繋がっているのかを皆が理解したことで、自発的に仕事に取り組むようになってきた。これが一番の成果だよね!」とおっしゃっていました。

 「自分のチームメンバーが、目的や他の仕事との繋がりを踏まえて会話し、目の前の課題に向き合うようになったら・・・、作業でなく仕事をしているという実感を得られるようになったら・・・。」そんな活き活きした職場を想像するとなんだかワクワクしてきますね。

執筆:仙場 拓人
※コラムは執筆者の個人的見解であり、iTiDコンサルティングの公式見解を示すものではありません。

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