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開発組織編制 -A社の組織戦略と体制-

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 A社は新しい組織戦略を以下のような指針としてまとめている。

1. 客の真のニーズを把握し、自分たちの商品開発に結び付ける。
2. 競争力のある商品を素早く確実にまとめ上げ、タイミングよく市場に供給できる。
3. 商品戦略の方向性を組織内で検討できる。
4. 専門技術開発の手を緩めず、技術開発の方向性を組織内で検討できる。
5. 業務の変動量に応じて、リソース調整をしやすくする。

 数年前までA社は下図5(*)のような機能別組織を採用し、機能組織の部門長が商品開発の最終責任を負い、メカ部門より任命された軽量級プロジェクトマネージャが機能部門長を補佐する立場で開発をとりまとめていた。 その結果、部門内の技術深耕や知識共有は加速されたが、設計業務と市場に出る商品とを結びつけて考える文化が育たず、プロジェクトマネージャも会議や文書の取りまとめが主な仕事となっていた。

 数度の小さな組織変更を経た後、現在は上記の組織戦略に添う形で機能別組織と製品別組織を両立させたマトリクス組織を採用した下図6(*)のような格好になっている。 1~3の組織戦略を反映する形で商品カテゴリ毎に『タイプX』、『タイプY』、『タイプZ』の三つの製品別組織を柱にメカとエレキの設計者をそれぞれ配置している。 一方、4と5に配慮するため、画像形成をつかさどる『電子写真プロセス』、複写機の頭脳とも言える『コントローラ』、プリントやスキャン機能を様々な技術と組合せて処理する『アプリケーション』の三つを共通技術として機能別に専門化し、技術の深耕とリソース調整の容易性を重視した。 これにより、プロジェクトマネージャは製品別組織から選出され、その役割は商品事業性と技術統合の両面から責務を負う重量級のプロジェクトマネージャにかわっている。

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(*)組織体制や組織名は一般化しているため、実際とは異なる。

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